第37話

「カエルぴょこぴょこ三ぴょこぴょこ、合わせてぴょこぴょこ六ぴょこぴょこ」


 俺は人がまばらになっただろう夜に病院へテレポートする。彼女の病室につき、そっと覗き込むと、ベットで読書している彼女の膝で、彼が眠っているのが見えた。

 彼女が俺に気が付き手招きする。


「入っていいの?」

「うん!もう平気だって」


そういうので、彼の方に目を落とすと、


「もう平気だって言ってるのにずっといるんだよ」


その顔はどこかうれしそうだ。


「頑張ったね」

「へへへ」


 俺がそういうと彼女は年相応の笑顔を見せる。その笑顔に魅せられ、俺は口走る。


「外見に行かない?」

「えっ?いいの!」

「一瞬だけね」


俺ははにかみながら、彼女の手を握る。


「カエルぴょこぴょこ三ぴょこぴょこ、合わせてぴょこぴょこ六ぴょこぴょこ」


 すると桜の木の下にうつる。しかし、シーズンでもないので、ライトアップも特にされておらず、真っ暗だ。


「ハハハ。良く見えないね」


 そういいながら彼女を見るとうっすら目を潤ませている。何も言わずに目をこすったので、俺は何も言わずに木を見上げた。


「カエルぴょこぴょこ三ぴょこぴょこ、合わせてぴょこぴょこ六ぴょこぴょこ」


病室に戻ってくると彼が目を覚ました。


「あれ?どうして」


そう言いかけたのを制すように


「じゃあ、帰るね」


 彼女に手を振って病室を後にした。

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