第34話
「カエルぴょこぴょこ三ぴょこぴょこ、合わせてぴょこぴょこ六ぴょこぴょこ」
自分の部屋に颯爽と降り立つと机に向かい、早速本を開く。目次を読まずに頁をめくり、片っ端から早口言葉を唱えている。なかなか見つからず、また探す。
「バスガス爆発」
すると辺りが流星群のように動き始める。トイレに戻り、本をレジに持っていき、本を持っていく。彼女に話しかけようと声をかけようとするが声をかけられない自分が見える。俺も彼女も店長もいるが俺の意識は、自分の部屋にいる。上手く説明することはできないが、過去を俯瞰的に見ることができるらしい。
俺は、このページを破り捨て、両手でかざす。再び、本に目を移す。片っ端から試していく。これを通して分かったことがあるのだが、全ての早口言葉に超能力がついているわけではないそうだ。今までの経験から行くと、早口言葉を唱えるとその能力が開花するような感じであったが、必ずともそうとは限らないらしい。
「東京特許許可局」
今度は先程とは逆に流星群が見え、朝、ベッドから起き上がって、床に投げ捨てたこの本につまずく自分の姿が見えた。これが分かったのであれば、後は実践あるのみ
だ。とりあえず、今日の会話を振り返ろう。
「おはよう」
「うわっ」
「ふふ、どうしたん?」
「な、なんでもない」
「待った」
「ん?」
「いや、なんでもない」
ダメですね。これじゃぁ、少し気持ち悪さもあります。このまま誘っていたら断られることは避けられなかったでしょう。しかし、どうやって誘うのが良いだろうか。まずは普通に誘ってみよう。
「夏祭り一緒に行かない?」
「えー、ふふふ」
笑ってごまかされた。これでは断られたも同然だ。
「今度さ、夏祭りがあるのを知ってる」
「うん。3日間とも友達と行くよ」
このパターンもあるのか。そもそもいきなり祭りに誘うのがどこか不自然なのか。誘える時間は限られている。まずは何気ない共通の話題から入ってみよう。
「て、テスト勉強してる?」
「期末の?」
「そ、そうそう」
「全然(笑)でもそろそろ勉強しないとやばいんだよね」
「今回範囲が広いもんね」
「そうそう」
「そっちは勉強してるの?」
「してない」
おっ?良い感じだぞ。
「そういえばテスト終わりにお祭りがあるんでしょう」
「あー、あるね」
「誰かと行くの?」
「んー」
「良かったら一緒に行かない?」
「あ。うん、良いよ」
イケる。これならいけるぞ。完璧じゃないか。
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