第33話

 祭りに誘うと決めてから初めてのバイトの日が来た。彼からも励ましもうけている。ここは意地を見せなきゃ。


「おはよう」


 決意を誓っていると後ろから挨拶される。驚きみっともない声を出してしまう。


「ふふ、どうしたん?」

「な、なんでもない」

 

 それならよかったと彼女は、微笑みながらエプロンをつけ、売り場に向かおうとした。


「待った」


思わず、声をかけてしまう。


「ん?」


 まっすぐな瞳でこちらを見つめる。とりあえず、何か話題を振らないとと考えを巡らすが、何も出てこない。例のごとく顔が厚くなるだけだ。


「いや、なんでもない」


 そういうと彼女は、ドアを閉め、見えなくなってしまった。まだ始まったばかりだ。チャンスはどこかであるはずだ。


 なんということだろうか。とうとう一度も話しかける機会が無かった。正確にいうと勇気が出なかった。あれ以降避けられているような気がしてしまうのだ。当然超能力を使う気も出なかった。

  はぁ、もっとこういう時に使いやすい超能力があればよかったのに。でもそんなのがあったら、流石に超能力をこえているか。と思っているととある本が目に入った。


『君は言えるかな?早口言葉!!』


 店内に時報を知らせるチャイムがなる。着替えると俺は店内に戻り、その本を手に取ってレジへと向かう。レジに目をやると彼女は、店長と交代している。これで最後のチャンスが途絶えた。いや、チャンスはこれからつくるんだ。


「すみません、これください」

「あ、お疲れ。はーい」


 そういって店長は、本を見る。オカルト好きだとか思われているのだろうか。スキャンした商品を俺に渡すと最後に


「見つかるといいね」


 と声をかけた。振り向きざまにどこか違和感を覚えたが、これさえあれば、必要な超能力を見つけ出すことができるかもしれない。早く帰ろうとトイレに向かう。

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