第31話
「次はいつバイトなの?」
降りる直前に彼女がぼそっと言った。
「え、あ、明後日かな」
「ふーん。じゃぁ、明後日ね」
うつむき加減んでまたぼそっと言う。
少しはにかんでまた明日。そういって電車から降りる彼女から目が途切れる。
とうとう何も聞きだす事は出来なかった。いつもそうだ。傷つくのが怖くて、現実から目をそらしてしまう。情けない自分に深いため息をつき、ふと顔を見上げるとしばらく見ていなかった顔が目の前に現れた。
なんだか、少し印象が変わっていないか?
そんなこた気にすることはない。で、今度は恋愛感情で悩んでいるのか。うんうん、お前ぐらいの年齢にはよくあることだよ。
「彼女の気持ちを知るために力を使おうとするんだけれども本当の気持ちを知るのが怖くて勇気が出ない」
「何言ってんだ。本当の気持ちを知りたい、お前には力がある。せっかくなんだから使えばいいじゃないか」
「そんなこと言ったって」
「まぁでもお前は賢いよ。確かに自分勝手な理由で人の気持ちを読み取るのは良くないよな」
立場がコロコロ変わるこいつに反応に困っていると
「まぁ、頑張りなよ」
そういってそいつは姿を消した。何だったんだろう。久しぶりに出てきたと思ったらよく分からないことを言って姿を消していった。
冷静に考えると電車でも別に会話が盛り上がっていたわけではない。というか向こうは、俺のフルネームを知っているかどうかも怪しい。そうだ。好かれている可能性が低いのは当たり前じゃないか。決心がついた。明後日のバイトで超能力を使うぞ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます