第30話

 下校中、あの雑貨屋がやっていたので、特に目的はなく立ち寄る。あの時は目当ての人形があったからよく見ていなかったが、他の商品もなかなか洒落ている。

 その中でもショーウィンドウから一際輝きを放っている商品がある。

 俺はその光に誘われて、ペンダントを手に取った。綺麗だ。それに彼女によく似合いそうだ。値札を確認しようとするがどこにも書いていない。不思議に思った俺はレジに立つ店主らしきおばさんに声をかける。


「ごめんなさい。あれは売り物ではないのよ」


 おばさんからそう言われて、少し肩を落とすが、いきなりこんなプレゼントしたら気持ち悪がられるだけかと、諦めることにした。


 駅につき、ホームで電車を待っていると


「どうしたの?」


 はっと目を向けると、隣に彼女がいた。


「いや、いや別に」


 少しそっけない態度で返事をしてしまった。


「これからバイト?」

「うん、君は?」

「今日は、行かないよ」

「そうなんだ。てか、なんか落ち込んでない?」

「そ、そんな事ないよ」


 俺は震えた声で言い返す。


「分かった!女の子にフラれたんでしょ」

「は?いやいや何言ってんの」


 俺の口調は少し強くなる。


「てか彼女なんかいないし」


 聞こえないぐらいの小声で言ったつもりだったがどうやら聞こえていたらしく、


「えー噓だー。君最近人気なんだよー」


 俺は思わず顔がにやける。もしかして体育祭での活躍で、本当に人気が出てきてるんじゃないか。


「そ、そうなんだ。あ、ありがとう」


 上ずった声が面白かったのだろうか。彼女が大きく口を笑い出す。みたことのない彼女の表情が俺の心に刺さる。


「そ、それはやっぱり体育祭で?」


 と話すが、下校時の駅でその声は彼女には届かず、俺に背中を向けていた。

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