第23話
受かると決まったわけじゃないから。はぁ~こんなに悩むんだったら募集しなきゃ良かったよ。
カウンターヘ行き面接と伝えると、一人の小奇麗な女性が事務所へと案内してくれた。
「ここでお待ちください」
そういって女性は奥へと消えていった。
「お疲れ様でーす。あれ」
すると制服姿の彼女が入ってきた。
「わっ、ほんとに来たんだ」
そういわれて少しどきっとする。やはり気持ち悪かったか?
「受かるといいね」
そういって彼女は笑いながら奥へと消えていった。彼女と入れ替わりで別の女性が出てきた。
「私が店長です。宜しく。じゃぁ早速ですけど面接始めますね」
その服装を見るといよいよ面接が始まるんだということを実感させられる。やっぱりこの職場で働くことができるのかどうか隅から隅まで見られるのだろうか。緊張した面持ちで相手の顔を見ているとおくから彼女が出てきた。
「頑張ってね」
中々お目にかかることのできないような笑顔で言われ俄然やる気が出てきた。めっちゃ可愛いな。
「彼女と知り合いなの?」
「い、いいえ。いや、こ、高校がおんなじだけです」
「あら、そう」
そういって彼女が再び書類へと目を戻した。いくつか質問をされ、答えをメモへと書いていく。
「それじゃぁ、結果は追って連絡しますね」
終わった。少しほっとして余裕ができたのか、なんなら彼女が連絡してくれたら良いのに。そんなことを考えてしまう。
「おんなじ学校なら、彼女に伝えてもらいましょうか」
「やった。い、いえ」
「ふふ、あなた顔に出やすいのね」
そういって笑いながら立ち上がり、店長はレジへと向かった。私も荷物をまとめ、後ろをついていった。
店長がレジに立っている彼女に話しかける。
「携帯取ってくるからちょっと待ってて」
そういって彼女は奥に消えていく。今、ついていったらさすがに気持ち悪いかな。と考えていると
「ついていきなよ」
店長に背中を押されるようにして、来た道を後戻りした。
奥から出てきた彼女は少し驚いたようだったが、すぐに笑顔で
「受かるといいね」
と言ってくれた。見た目はどちらかというと清楚から少し離れているように見えるが、顔をクシャっとして笑うので、普段とまた違った顔を見ることができ、とてもかわいらしい。
異性どころか他人と連絡先を共有するのがなんだか初めてのような気がする。いや、確かに初めてなわけがないのだが連絡先を交換するほど親しい友達もいない。最近友達のことに関することを考えること多いな。
未だに信じられないが連絡先を交換した。それも彼女とだ。思わずため息が出る。こんなことがあってよいのかしら。まるで夢みたいだ。その日私は、一歩一歩現実であることを確かめるように歩いてうちまで帰った。
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