第14話
入場行進、準備体操、校長先生のお話、だんだんと近づいてきて、開会宣言とともに遂に体育祭が始まった。
第一種目は百メートル走。なんと、しょっぱなだったのだ。開会式後すぐに放送で呼ばれる。3年生が順々に走っていき、2年生の番になる。第一走者が呼ばれ、一列に相まみえる。隣を見渡すと端からサッカー部、サッカー部、バレー部、野球部、俺をはさんで後二人いたが、俺は確かめずにゴールを見つめた。流石は最初の種目。体力自慢がずらりと並んでいる。皆身長も大きく、なんだかおなかが痛くなってきた。
スターターの体育教師が手を上げると全員の足にぐっと力が入る。その迫力は、俺を縮こませる。ダメだ。勝てるわけがない。いっそ超能力でも使おうか、そう悩んだ一瞬、スタートの音が響き、他の走者が一斉にスタートを切った。
悩みに気をとられ、音が鳴り切ってからスタートを切ってしまい、完全に出遅れた。もう超能力を使っている場合ではない。俺は、今までで一番と言っても良いほど腕を振り、全力疾走した。
一人を追い抜いたことは目に入ったが、それからは無我夢中だったため、全力でゴールした。同時にどっと歓声が上がる。すぐにクラスメイトが走ってきて
「凄いな7クラス中3位だってよ」
と喜ぶ。
良かった。最下位じゃなくて。安堵が先に来て、喜びを上手く表情にすることができなかった。
体育祭は進み、いよいよ二人三脚の時間だ。彼が足に紐を括り付ける。
「3位だってな凄かったな」
「いや、ぶっちぎりで一位だったそっちの方がすごいでしょ」
彼は、今まで四種目、全てで一位に輝いている。
「でも、これが一番負けたくないんだよね」
彼はそういって、ゴールを見つめて微笑んだ。
コースに出てピストルの音と共に一斉にスタートをきる。皆練習の成果もあってか、遅かったメンバーもいい勝負をしている。俺らもバトンパスの場所で待ち構えている。前のペアが2.3位で走ってくる。ところが足がもつれたのか、寸前でこけてしまう。
俺と彼の時が止まる。とっさに俺は大きな声で叫ぶ。
「生麦生米生卵!」
すると転んだペアからバトンが俺の手に渡る。それから抜かれたペアを抜き返し、一位のペアの背中が見えてきた。足の回転がだんだんと速くなり、横に並ぶ。そのままゴールする。
全員がゴールし終わった後にゴール前の生徒が教師と相談している。話し合いの結果、彼の体が前に出ていたらしく、見事一位に輝いた。
「っしゃー」
彼が俺の背中を叩く。俺は喜び過ぎて上手く喋れない。
「俺はじめてだよ一位とったの。練習のおかげだよ」
とりあえず思いついたことを矢継ぎ早に伝えてしまう。そいつは笑いながら俺と肩を組む。その姿を実行委員が写真に撮る。だんだんと周りには他のクラスメイトが集まってくる。最終的に大勢で写真をとることになった。
目線の先には彼女がクラスメイトと談笑している。この雰囲気で、何か会話するきっかけでもつかめないだろうか。いや、無理か。クラス違うし。
体育祭は、見事俺らのクラスが優勝した。なんといっても彼の活躍に限る。彼の声掛けで、クラス写真を撮ることになった。彼が写真を撮るように頼んだ女子生徒はなんと彼女だった。
彼は俺を呼び、一緒にとろうぜと声をかけてくれた。俺は彼の近くに移動するが彼女から目を離せない。そんなに見ているものだから彼女と目があってしまう。俺は慌てて目をそらしてしまう。結局何も出来ないのだ。
彼女は俺の事をどう思っているのだろうか。自分でいうのもなんだが、今日は結構目立っていた気がする。超能力で聞いてみるか。確か前回テレパシーもあったな。俺は彼女の方をもう一度見て
「竹屋に高い竹立てかけた」
前回と違って何も起こらない。すると彼女がまたこっちを見てくるので、俺は逃げるように教室に帰った。
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