第13話
翌朝、少しだけマシになった筋肉痛と一緒に起き上がる。超能力で横着はせずに準備をすまし、駅へと駆け足で向かう。
学校へ着くと、今日も彼らが俺に挨拶をしてくれる。今日は俺も勇気をもって返す。
「お、おはよう」
驚かれると思っていたが彼らはそんなそぶりを見せずにすぐに会話にも戻る。俺は頑張って会話にも参加しようとする。なれないことをしたせいか、学校が終わるころにはすっかり疲れ切っていた。
それでも今日も駅まで走っていく。いつ以来だろうか。こんなに努力しているのは。高校入ってから初めてな気がする。なぜだろうか、彼にはどこか人を引き付けるような魅力があるのだろうか。
二、三週間経ったころ、練習にも慣れ、筋肉痛とも打ち解けられてきた。朝、ベッドから体を起こし、日付を確認する。遂に体育祭の日がやってきた。
ここ最近のルーティーン、駅までのランニングで今日も学校へ向かう。いつもと変わらない朝なのだが、どこか胸が震えている。しっかりと練習の成果を発揮することができるのだろうか。
学校へ着くとクラスごとに決めたTシャツを着る生徒達がちらほら見受けられる。心なしか雰囲気がいつもより明るい気がする。昨年も思ったがこの雰囲気は嫌いじゃない。
教室へ行く途中、廊下で彼女とすれ違う。彼女もクラスのTシャツを着ている。いつもと違った印象を受けるがそこがまた良い。
教室へ入ると、彼の周りにはいつも以上の人だかりができている。無理もない、他の生徒達同様、クラスメイトも盛り上がっているのだろう。
「おは・・・」
挨拶をしようと人ごみに顔を覗かせると、どこか雰囲気が重い。今まで見てきた生徒達とは少し様子が違っている。近くにいたクラスメイトに尋ねると、どうやら百メートル走の参加生徒が欠席らしい。そこで代走を決めたいのだが、頼みの彼は、五種目出ているためもう出られない。
「誰か出られる人いないの?」
女子実行委員が男子生徒を見回す。見つめた先の最後、さっき来たばかりの俺と目が合う。最後に目が合ったせいか心なしか見つめられている時間が長い。体育祭当日に似合わない重たい空気に耐えきれなくなった。
「じゃあ、お、俺が出ようかな」
するとその女子は満足そうにうなずき、俺の名前を出場名簿に付け加えた。出ると言ったは良いものも果たして結果が出せるだろうか。周りは問題が解決し、雰囲気も明るくなってきたが、俺は不安をぬぐえなかった。
始業のチャイムがなり、担任が入ってくる。いくつかの注意を言った後に実行委員に一言促す。先程の女子生徒が
「欠席者の分まで頑張っていきましょう」
と言う。視線がこちらに集まる気がした。その時の顔がよっぽど不安げに見えたのだろうか、校庭に向かう前、彼がそっと俺の肩を叩いた。
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