第12話

 HRが終わると彼が勢いよく俺と目を合わせる。席から飛び上がるとこちらに向かってきた。


「いこうぜ!」

 勢いそのまま俺を誘う。俺は、今朝の出来事がどうしても忘れられず、心なしか足取りが重い。文字通り公園へ連れ出された。

 公園へ着くと、他のクラスメイトの姿がない。


「他のメンバーは?」

「部活だって!」

「部活は?」

「今日はオフ日!」


 なんと。他のメンバーは部活に所属しているらしい。この間の練習には参加していたので、てっきり皆帰宅部なのかと思っていた。朝のあの出来事があって、彼と2人だけで練習か。勝手に少し気まずい雰囲気を出してしまう。

 しかし、2人しかいないということは、何気なく、聞きだしやすいということでもある。俺は練習中にチャンスはないか、伺うことにした。


「じゃぁ、次のオフ日にまた練習な」


 そういうと彼は帰りの支度を始める。

 聞けなかった。

 俺は呼吸を乱しながら、今日の練習を振り返る。いつ見ても彼の表情は真剣そのもので、とてもじゃないが関係のない話は出来なかった。それでいて、体力のない俺に休憩させてくれたり、気遣いを忘れない。それどころか、彼を見ているともっと頑張らなければいけないという気持ちにさせ、俺をどんどん練習に集中させる。


「気をつけてな、また明日!」


 そういって彼は背中をむける。その時、一つのアイデアが浮かんだ。超能力だ。テレパシーを使えば聞きだせるかもしれないぞ。

 俺は彼の背中に手を向ける。

 やめた。

 こんだけ真剣にやっているのだ。俺だけ、関係ないことで悩むのはやめよう。別に体育祭が終わってから聞き出したって遅くはない。よし、今日から俺も駅まで走って帰ろう。本番では、足手まといにならないように気をつけなくては。

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