第10話
翌朝、目が覚めると、全身の筋肉痛で起き上がることができない。昨日は無理せず、皆と一緒に帰れば良かった。後悔先にたたずという感じだ。まず、服を着替えなくては。
なんとか体を起こすが、ベッドから降りることができない。クローゼットに手を伸ばすが、当然届かない。瞬間移動してみるか。
「カエルぴょこぴょこ三ぴょこぴょこ、合わせてぴょこぴょこ六ぴょこぴょこ」
扉にぶつかるも、なんとか移動することが出来た。取っ手に手を掛け、立ち上がり、服を用意する。そしてもう一度唱え、リビングに移動する。筋肉痛からか上手く着地することが出来ず、階段で転んだような音がする。父と母が何があったのかと顔を覗かせる。
二人の間を抜け、食卓につく。朝食をとり終わると、定期券を部屋に忘れていることに気が付いた。また部屋に戻るか。
「カエルぴょこぴょこ三ぴょこぴょこ、合わせてぴょこぴょこ六ぴょこぴょこ」
部屋の机の上に移動する。昨日はどこに定期券を置いたっけな。筋肉痛がひどくて、移動できない。あまりにも見つからないので、思わずあごをさすってしまう。口についた朝飯のカスが気になって手が伸びてしまう。
「なんだこれ。あぁ、朝の卵か。生麦生米生卵~」
つい、早口言葉を口ずさんでしまう。すると、頭に何か落ちてくる。定期券だ。どこにあったんだ?まぁ、この際何度もいいや。急いで学校へ行こう。
「カエルぴょこぴょこ三ぴょこぴょこ、合わせてぴょこぴょこ六ぴょこぴょこ」
目を開けると着いたところは電車の屋根の上だ。まずい、まずい
「カエルぴょこぴょこ三ぴょこぴょこ、合わせてぴょこぴょこ六ぴょこぴょこ」
すると今度は、車掌室。運転手と目があって、ごまかし笑いしながら、部屋を出る。結局電車に乗って、学校へと向かう。探していた時間無駄だったな。学校の最寄り駅につくと、電車から降り、ホームのベンチに座る。同じ学校の生徒やサラリーマンが改札に向かって人ごみをなす。ホームに人が少なくなったのを確認してから、柱の陰に隠れ
「カエルぴょこぴょこ三ぴょこぴょこ、合わせてぴょこぴょこ六ぴょこぴょこ」
昨日のトイレにつき、学校へと歩いて向かう。今考えてみると、結局瞬間移動するから定期券要らなかったな。ちょっと待てよ。今日改札通ったか?まずい、キセル乗車にならないかこれ。
「大丈夫、大丈夫。バレやしないよ」
アイツが耳元でささやいてくる。
いやいや、そういう問題じゃないだろ。正直に言うか。い、いやでももう学校に行かなくちゃいけないし。
「なんだ、黙ってるつもりじゃんか」
痛いところをつかれる。と、とりあえず、帰りからは改札を通ってから瞬間移動しよう。定期代も払ってるんだし。
「そういう問題なのか」
そう言い残すとアイツはいなくなっていた。
とりあえず今は学校へ行こう。
「カエルぴょこぴょこ三ぴょこぴょこ、合わせてぴょこぴょこ六ぴょこぴょこ」
ついた先は学校のトイレだった。瞬間移動はトイレにしか移動できないのか。教室へ入ると今日も彼が俺の席の周りに人を集めている。
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