第9話

授業が終わり、彼の呼びかけのもと、二人三脚の参加メンバーが集まり、学校の近所の公園へと向かった。

 公園につくと、まずは走る順番を決める。アンカーは一番に決まった。俺らだ。それから、体育で提案したように速い、遅い、遅いで決めていく。

 続いて、バトンパスの練習だ。公園を一周し、次の走者にバトンを渡す。最初はミスもあったが、だんだんとミスが減ってきた。

 それからペアでの練習にうつる。日も暮れてきて、他のメンバーも帰宅し始める。俺らもそろそろ引き上げたいなと思い彼を見ると真剣な表情をしている。この表情に帰りたいとは言いづらい。


「もう終わろうか」


 彼から切り出してきたので少し驚いた。けれども彼の表情から見るに満足のいく感じではなさそうだ。


「いや、休憩はしよう」


 その表情を見て、俺はやっぱり帰るとは言えなかった。彼はどうしたいと思っているのだろうか。


「竹屋に高い竹立てかけた」


 公園の蛇口から水を飲む彼に向けて唱えた。

(俺らがアンカーだからもっと速く走らなければ。俺がもっと頑張らなくては)

 相当思い込んでいたらしい。流石体育会系。責任感も人一倍強い様だ。


「もう少しやろうか」


 俺は、日ごろの運動不足のせいで、手も足ももう限界だったが、彼の心情を聞いたらやっぱり、帰るとは言えない。


「いいのか。だいぶ疲れているようだけど」

「平気平気」


 そう平静を装って、練習を続けた。

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