第5話
気が付けば、授業は7限まで進み、これからLHRが始まる。LHRのせいか、休み時間の延長といった感じで、皆どこか落ち着きがない。
少し遅れてきた担任は、入ってくるなり、黒板に議題を書いた。
「体育祭種目決め」
真ん中に大きめに書かれた文字を背に
「一人一種目は出るように。それじゃぁ、男女に分かれて種目を決めてくれ」
そう言うと、教卓の後ろに隠れていた椅子に腰を掛け、本を読み始めた。
クラスメイト達は気だるそうに立ち上がると、自然に仲が良いメンバーでまとまりはじめ、体育委員の机へと向かう。俺も遅れず、かといって後ろの方が確保できるように微妙なスピードで皆の後を追った。
まだ、5月。新しいクラスになってから1カ月程度しかたっていないのに、話し合いで物事を決めるのは私にはハードルが高い。
去年も思ったが、体育祭やるの早くないか。せめて夏休み後とかもう少し仲が深まった時期にやったほうが良いのでは。尤も去年は完全に出だしを見失い、友達をつくるタイミングを一年間見逃し続けていたのだが。
このクラスは去年同じクラスだったやつが多いらしく、話し合いも滞りなく進んでいく。どうやら不安に感じているのは俺だけなのだろうか。俺は発言のタイミングを逸し、まだ1つの種目にも参加しないことになっている。
「じゃあ、余った人らは二人三脚で良いっか」
実行委員がそういうと、俺は伝わるように大きくうなずいた。こういう時に声も出さないとは、なんと情けない。
とりあえず、参加種目が決まった事に安堵していたのも束の間、このままでは奇数の為、一人あふれてしまうことが判明した。不幸なことに他の参加メンバーは互いに面識があるようでペアがすんなり決まってしまった。このままだと俺は一人で二人三脚に参加することになってしまう。
俺は変に視線を集めているような気がして、次第に顔が熱くなってくる。
すると背もたれに前かがみに寄りかかる彼がこういった。
「じゃぁ、俺これにも出るわ」
すると実行委員から
「いや、背が違いすぎるだろ」
と笑いながら突っ込んだ。そして、小さい方である俺の方を見て、すぐに目をそらした。少しうしろめたさを感じたのだろうか。
「いや、大丈夫っしょ、なぁ」
「うん」
思わず間髪入れずに答えてしまった。
彼はバスケ部らしい。というのも直接聞いたわけではない。去年別のクラスだった彼が俺のクラスに教科書を借りに来たことがあった。その時、隣にいた女子生徒達がカッコイイとか、バスケ部だとか噂しているのが耳に入った。断っておくが盗み聞きしたわけではない。断じてない。
性格も明るいらしく、まだ1カ月足らずで、クラス男女分け隔てなく仲が良い。当然運動神経も良いらしく、皆から期待され、今回の体育祭では、五種目に参加を表明している。クラスの中心メンバーといった感じだ、
「よろしく」
そういって、俺の隣に移動してきた彼は、流石バスケ部というのだけあって、身長も大きく、太っているわけではないがしっかりとした体つきに見える。
「よ、よろしく」
迫力というのだろうか、思わずたじろいでしまう。まぁ、体育祭までだ。無難にやり過ごそう。
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