第六話
「ひょい!」
ハナツキは手のひらを横に軽くすると、線に吊るされている木雲胚蛾の身体もまるで操り人形のように動く手を横に振った。
その瞬間、宙に浮き自由を失っている黒音の身体は凄まじい速度で洞窟の岩壁に激突した。
「がッ!」
その衝撃は凄まじく、彼女の身体は洞窟の壁にめり込み、木の破片などが突き刺さった。
「カハッ……!」
それでも何とか身体の自由を取り戻した黒音は苦しそうな声を上げながらゆっくりと立ち上がった。
た。
「ハハッ! コレ凄い性質!ただの我玉じゃなくて女神の祝福が混じっているキメラだッ!」
ハナツキは、まるで新しいおもちゃを発見し、遊び始めた子供のように興奮しながら今一度彼女の体の自由を奪い、宙に浮かせた。
「は…放して…!!」
彼女は必死に抵抗しようと、体を動かしていた。その様子はまるで、蜘蛛の糸に引っかかった蝶のようだった。
「クッ……このッ!この!」
黒音は必死にもがくがそんな抵抗は無意味なようで、黒音の身体は宙に浮かび、まるで操り人形のように自らの意思で動くことができない。
それからというもの野球少年が、ピッチングの練習をするために一人でボールを何度も壁に投げては、キャッチする光景のようにハナツキは彼女の身体を操りひたすらに四方八方の岩壁に叩きつけてた。
「カハッ!!」
朔月は口から血を吐きながらも
あとか意識を保っていた。
そんな彼女をハナツキはひたすらに、岩の壁に叩きつけてはまた宙に持ち上げるということを繰り返した。
そして彼女は遂に限界を迎えたのか地面に倒れ伏した。黒音の目にはもはや生気はなく、四肢がありえない方向に曲がったまま動かない。
それでもまだ息はあるようで、彼女の体にできた傷は激しく出血しながらも、目に見えるスピードで自然に治癒していっていた。
「あ~天空狗族って人妖のくせに頑丈さはやっぱ高いよね……」
ハナツキはそう言いながら、木雲胚蛾を操った時と同じ様に、彼女の体を操り始め、宙に浮かせた。
「わ……私をどうする気……?」
黒音は今にも消えそうな意識の中で、ハナツキに向かってそう聞いた。
「うーん、まぁ知りたいことは大体しれたし、この木雲胚蛾は蘇生しようと思う…彼は出来損ないの中でも一番優れた力を持った我が同胞の命を救ったからね。それくらいはまずは返さないと…でもその前に、彼に危害を加えた貴様だけは、もうここで始末する」
その瞬間、ハナツキの殺意はより濃くなり、まるで今にも爆発しそうな感情をなんとか理性で押さえ込んでいる……そんな感覚を覚えた。
黒音は観念して目を瞑る、しかしその時聞き覚えのある男性の声が洞窟内に響き渡る。
「そうか…恩があるなら…それなら尚更、俺の身体と力で好き勝手なことをするな!!」
「!!?」
「!?」
黒音は驚愕して目を開いた時そこには、理解不能な光景が広がっていた。
どういうわけか、死んだ木雲胚蛾が息を吹き返し、今まで操り人形のようにハナツキに操られていたはずのその身体が、まるで自分の意思で動いているかのようにハナツキの首を右手で絞めていたのだ。
「え?! 君の玉は私が…!」
「俺の身体から出ていけッ!」
木雲胚蛾はそう叫びながら困惑した様子のハナツキを突き飛ばし、自らに巻かれた黒い線を引きちぎった。
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