第二話
「死んで…」
すると刀からはプシューっと音が立てて、白い煙が上がった。
「ッ!!」
俺は慌てて彼女から離れようと、一歩後ろに下がったが、遅かったようだ。
「バシュンッと大きな音が鳴いたと思った瞬間には、俺の目の前には彼女の刀の切っ先があった。
「あぶなッ!」
間一髪回避できたけど……これはマジでヤバいな。まさか問答無用で斬りかかって来るとは思わなかったしそれに何より速い。
普通の人間なら一振りで俺の胴体を真っ二つにする速さだ。しかもその刃先は確実に俺を狙っていた。
加えてあの刃先から放たれる煙は、もう俺を飲み込んでいる。
この煙自体に毒はなさそうだが…無いなら無いで、あの女はこの煙に紛れて次の攻撃を仕掛けてくるだろうということは用意に想像ができる。
「ッ!!」
彼女は、一瞬驚いたが直ぐに刀を構え直し俺に切りかかってきた。
今度は横なぎだ。しかもさっきよりも速い!俺は咄嗟に身を屈め回避した。
「チィッ!」と彼女の舌打ちが聞こえたと同時に、俺はそのまま前転して彼女から距離を取った。そしてすぐさま立ち上がり、彼女に向き直るが……もうそこに彼女はいなかった……代わりに俺の背後に気配を感じた。
俺が慌てて振り返るとそこには彼女がいた。それも刀を振り下ろそうとしている最中だった。
「!」
俺は咄嗟に横に飛び込み回避したが、刀の切っ先は僅かに俺の左腕を掠めた。
「やるわね…そんなカスり傷程度で済ませるなんて…でも…」
彼女は再び刀を構えながら言葉を続けた。
「なぜ【
「え?何だそれ?」
俺は思わず聞き返した。だが彼女は答えず再び切り掛かって来たのツキの斬撃だった。
「うわぁ! 質問に答えろよ〜!」
オレはそう叫びながら、必死に迫りくる斬撃を躱そうとする。 しかしその斬撃のスピードは目にも止まらぬモノでオレは奇跡的にかわし続けているものの、その肉体は着実に削られていった。
「…ッ」
それでも俺は何とか斬撃を搔い潜り、距離を取ることに成功する。
彼女から左腕を見ると、もう血は止まっていた。だがそれでもかなり出血したのだろう生暖かい感覚が肌に纏わりつく……それに微かに熱も感じる。
俺は恐る恐る切り裂かれた腕を見た。
「うう…痛い」
傷口からは真っ赤な血がドクンドクンと流れ出ており、その傷を見た瞬間に鋭い痛みが走る。
「……ッ」
俺は歯を喰いしばり痛みに耐えた。そして、傷口を手で押さえて止血を試みるが……血が止まる気配はない。
「く……くそぉ……」
すると突然俺の頭の中に誰かの声が聞こえてきた。
『何をしている?力を使って早く目の前の脅威を排除しろ。』
「え?誰?」
俺は思わずそう呟いた。その声は聞いたこともないはずだが、どこか懐かしく、温もりを感じる女性の声だったのだが、その声は俺の脳内に直接響いているようで……まるで自分の声ではないようだった。
『早くその女を殺せ!さもなくば死ぬぞ!』
「さっさと死ね」
「あぐっ!」
彼女の鋭い蹴りが俺の脇腹を抉る。
「うぐ……くそぉ」
俺は、痛みを堪えながら立ち上がり彼女から距離を取ったが……すぐに距離を詰められ、また切りつけられる。
「ひぃ~ッ!」
俺は情けない悲鳴を上げながら、身体を捻ってそれを躱す。
「うぐッ」
しかし、完全には避けきれず彼女の刃が頬を掠め、そのまま尻もちをついてしまった。
洞窟の中は広く、低く、それ故に地面を埋め尽くす浅い水は、この場所まで埋め尽くしている。
そのおかげでオレはパンツごとズボンがビショビョに濡れて更に体が感じる重さと疲れが増してしまった。
「はぁ……はぁ……くそぉ……このままじゃ…」
『死ぬな』
「え?」
『だがお前にはそれを防げる力があるだろう?』
「一体……力って?」
俺は、また聞こえた謎の声に思わずそう呟いたが、その時足元に転がる、不自然な形の岩の破片が目に入った。
「これは……オレがさっき謎の…あの超能力みたいのを使って砕いた岩の欠片?」
そこには、不自然に砕けた大きな岩が転がっていた。
『そうだお前だけに備わる…その超能力を使え……今なら出来る』
「こんなものを…人に向かって?」
オレは目の前から、迫りくる少女の方をじっと見た。 改めて見てみると化け物じみたスピードと、動きの速さに戦慄する。 しかしその姿はやはり…
「人の形をしている者に…こんな力……そんなものを……」
『何を
謎の声からのささやきを無視して、オレは立ち上がりゆっくりと深呼吸してから、目の前の少女を真っ直ぐ見据える。
そして彼女と目を合わせたまま、顎を引き、両の拳を握りしめ、腰を低く落としファイティンポーズをとる。
『なにを…している?早く力を…』
「断る…」『なにッ!?』
頭の中で響く、驚愕する声を無視して、オレはもう一度深く息を吸い、吐き出した。
「なにをしているのよ?ようやく潔く死ぬ覚悟が出来た?」
少女は刀を一振りしながら、ゆっくりとオレの方に向かって歩き、そういった。 その目は冷たくさすようなものだったが、よく見るとその奥には燃えたぎる怒りや、憎しみのようなものを感じる。
「あぁ…出来たよ」
オレはそう言って、彼女に向かって駆け出した。
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