第12話 司馬遼太郎著 街道をゆく 40 台湾紀行 5/8

今回は司馬遼太郎著『街道をゆく 40 台湾紀行』です。

朝日文芸文庫文庫の978-4022644947。

NDC分類では文学>日記. 書簡. 紀行に分類しています。


1.読前印象

 街道をゆくシリーズは結構持っているんだけれど、台湾は未読。他のも読んだとはいっても必要な部分を抜き出して読んでいるくらいだったりする。

 台湾は現地の会社の社員旅行についていってバンで台東の海岸を走って中華料理ではなく焼き肉食べ放題に行ったり一昔前の温泉に行ったりと、全然台湾らしくないムーブをしたことしかない。……故宮博物院にもいってない。つまり行ったことはあるものの台湾観光はまるでしてない。

 知ってることといえば虎ババアという浅茅が原の鬼ババア的なのがが留守番してる家にやってくる話とか海の守り神媽祖様とか冥婚とかお盆の観念が結構違うことくらいかも(偏っている。

 さぁ、張り切って開いてみよう~。


2.目次と前書きチェック

 やばい。章タイトルが地名じゃないから中身がちっともわからない。多分最初『流民と栄光』は台湾の歴史なんだろうか。『看板』とか『二隻の船』とかそんな名前のタイトルが並んでいます。

 困ったな。とりあえず気になった『魂魄』『鬼』『寓意の文化』を読んでみよう。サザエさん的。


3.中身

 『魂魄』について。

 途中から読み始めたからよくわからないんだけど、同行のご友人と思われる田中準造氏について語られ始めた。これがエッセイというやつか。その回想からトークに入り再び回想に戻るという書き口の鮮やかさは上手いなと思う。陳舜臣先生の中国の歴史なんかも話が次々と百年単位で吹っ飛んでいく(とても好き)ので、歴史作家のエッセイってこういうものなのかもしれない。

 この話の内容で魂魄というタイトルをつけるセンスは素晴らしいと思うけれど、内容としてはご友人の過去を巡る旅のお話でお化けが出たりはいたしませんでした。

 『鬼』について。

 丁度媽祖様の話から始まる。

 鬼という概念は日本と中国では大きく異なる。中国ではどっちかっていうと霊、多分引用されているのは恐ろしい祖先霊や牡丹灯籠、聊斎志異なんかの僕の話でよく出るやつ。道教が出来た頃までは祖先霊転じる鬼神は人に生贄を求めるものだったのを、孔子も含めて諸子百家が頭を捻ってマイルドにしようとして、三国志のあたりの志怪小説ではどっちかというと色っぽいお姉さんがよく出ていたような印象。聊斎志異も幽霊だから怖いっていう文脈でもない気がする。でもそういうくくりでいけば媽祖様も鬼なんだろうか。

 殷の話を出しているけど、殷の途中でいわゆる祖先霊、鬼神の内容って大きく変わってる印象がある。というか殷はマジ呪術国家なので……。

 好きジャンルの話だけど、これ絶対わかっててぼんやり書いてるなって空気をヒシヒシと感じる。紀行文としてライトに流そうとするとこの範囲の話になるのか……!

 『寓意の文化』について。

 丁度台東の山中の温泉に行った話、は冒頭数行で終わる。僕が行ったのは小さな滑り台がある一昔前のスパ的なところだったけど、風景はこんな感じだったような記憶。

 メインは民族について。結構興味深い。民族と名付けるのは大抵の場合、その民族外の人なのだ。台湾人のアイデンティティというのは重層的なものなんだろうなと思った。そして次章の冒頭で『首狩り』という文字をみつけて読み勧めたいと思ったけれどとりあえずここまで。

 この間コルシカ紀行を読んだけれど、紀行文っていうのは普通の小説やエッセイと違った独自構文がありそうです。歴史と紀行文はじつはものすごく合うんじゃなかろうか。

 そもそもこの本は観光案内的な要素はあんまりないので、小説に使えるかというとそうでもない感じ。多分、著者は何かを確かめにこの地を訪れているのであって、観光してるんじゃないよな、これ。


4.結び

 この独特な文章は面白いです。好きな人は好きと思うけど、僕は必要なことだけ書かれた文献の方が好き。

 次回は窪寺絋一『酒の民俗文化誌』です。

 最近あんまりお酒を飲んでいません。

 ではまた明日! 多分!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る