第13話 窪寺絋一 酒の民俗文化誌 5/14
今回は窪寺絋一著『酒の民俗文化誌』です。
世界聖典刊行協会のぼんブックス41978-4881101919。
NDC分類では社会科学>衣食住の習俗に分類しています。
初めて聞く出版社だな。前回から少し時間が空いてしまいましたが、ご笑納ください。
1.読前印象
酒で民俗というと何年か前のアニメ映画で出た口噛み酒がぱっと浮かんだんだ。でも出版社が世界とついているから足踏みワインとか泥炭人とか出るかもしれない。酒といえば昔から宗教やアウトローな方面にも関わるもので、開いてみないとわかんないや。
さぁ、張り切って開いてみよう~。
2.目次と前書きチェック
はしがきを見るとワールドワイドに総覧する感触。中国の清酒の醸造技術の特殊性とか知らない概念が出てきていて興味深い。目次を見れば技術的な話が最初に来て、主に日本における酒の歴史と飲酒文化がメインに、加えて日本における米の神性にも触れつつやはり宗教の話が展開される、ようだ?
なお、章立ては「1章 東の酒・西の酒」「2章 日本酒造史」「3章 現在の酒造法」「4章 酒の宗教と民俗」「5章 日本飲酒史」です。
民族的な部分にくると既知の部分が結構ありそうなので、あまり知らずにメインストリームに触れそうなところを探した結果、第2章日本酒造史の中の『1古代の酒造』を読んでみることにする。
3.中身
そんなわけで古代の酒造。
遺跡から出土された酒器や植物から想定される酒と酒造りを検討するという考古学的な検証から始まり、日本や中国の古典籍の引用しつつ、考古学と民俗学が絡み合う結構重層的な内容が展開をしている。ヤマタノオロチに飲ませた八醞酒の意味とか今まで考えたことがなかった視点が結構ある。
文献的には日本書紀、各風土記、延喜式なんかの一級資料をベースにして当時の酒造りを推察する。作り方としては多分こうなんだろうなと思うものの、文献との紐づけはともかく、その結論に至るには論拠が薄い気はするが、紙幅もあるし古代の文献はそもそも少ないので推論の過程を完全に埋めることは不可能だろう。
僕の興味としては、酒に対する人々の認識がどのようなものであったかというのがもう少し知りたいけど、きっとそれは後の章で語られる。古い時代では酩酊が神がかりに繋がるんだろうなあとは思うわけで、その神物たる酒の管理方法とか取り締まりとかそういうの。時間があったら後ろの方を読んでみたい(その結果積本になる発想……)。
最初をするっと飛ばして読み始めたけれど、この本は最初を飛ばしては駄目な本だ。一番最初に酒とは何か、発酵とは何かというわりに科学的分析的な内容が記載されていて、それを前提にその後の章の話が展開している。1章も結構面白い。
小説を書いてると児童向けでない限り多少の飲酒シーンというのは出てくるものと思うけれど、日本の歴史物を書くなら資料になると思う。但し文献的な側面の強い本なので、生活を描くならもっと適する本はある気はする。
4.結び
わりに辞典的に使える気はするけれど、宗教や飲み方というのは別立てになっているので、全体を読まないと総体を把握できない感。。抜き読みはもったいない。
次回は石川元助著『毒矢の文化』です。
今は心理比重の重い話を書いていて、本とか他のを描くのが難しい現象が生じています。そっちの締切は5月27日なので、そのあたりまで遅滞するかも。
ではまた明日! 多分!
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