第4話 中川右介著 クラシック音楽と西洋美術 教養のツボが線でつながる 4/30

今回は中川右介著『クラシック音楽と西洋美術 教養のツボが線でつながる』です。

青春出版社の978-4-413-09401-6。

NDC分類では芸術・美術>洋画に分類しています。


1.読前印象

 正直なところ、僕は音楽については門外漢だ。とりあえずアレクサさんに「クラシックかけて」とのたまい、あ、この曲知ってる、っていう程度の教養しか持ち合わせていない。

 今回の本のテーマはクラシック音楽と西洋美術なんだけど、クラシックというのはそもそも古典という意味で過去を回顧するワードかなと思っている。近世西洋文明において重要といえば言わずもがなルネッサンスなのであるが、荘厳なゴシックからルネッサンスを経てキラキラのバロックへの転換したわけでどちらかというと建築としての興味あるいは哲学的な方の興味はそれなりにあれども音楽という分野についてはほぼ未開の地である。けれどもこの大きな思想的転換は当然ながら音楽の世界にも強い影響を与えたはずで、そんなことが書かれているのではないか、と予測。絵画はどちらかというとカソリックとプロテスタントの宗教絵画においてその差が顕著な気がするんだけど、自信ない。

 さぁ、張り切って開いてみよう~。


2.目次と前書きチェック

 おっ。絵画を見て感動するっていう概念は素人的によくわかんないよねっていうとても共感する前書き。絵を描く人の話はちょくちょく書いてるんだけど、絵自身がダイレクトに齎す感動ってのは僕にはよくわからんのだ。けれども感動というのは様々な類型があり、例えば小説とか文字媒体が齎す感動っていうのは自分の頭の中で再構成したときの自分の理屈との合致かなと思うの。未踏の分野ってその理屈と合致する文脈自体を持ってないから、そのための知識を蓄えようっていう話。同意。

 目次を眺めると、やっぱりルネッサンスから始まりバロック、それから産業革命を経てフランス革命、ロマン主義を通って現代(一次大戦)までの一連の流れのようだ。確かにプロレタリアートや現代美術ってのはそれぞれの文化背景を前提になりたつので、ある程度の文脈を知らないと話にならない気がしてきた。芸術というのは戦争とも大きく関わる。


3.中身

 まず各時代区分においてどのようなことがあり、どのような思想や歴史に影響されて絵画や音楽が作られたかというのが各章の冒頭にある。そしてその時代における著名な画家や音楽家を取り上げ、その個別の絵や楽曲ではなくその人生や背景にスポットが当てられた内容となっている。例えばどこで生まれ、どんな仕事をしてどんな人生を送ったかという観点がメインだ。有名な作品に対する解説や絵や楽曲の傾向もかかれてはいるけれど。

 全体的にみてクラシック音楽”と””西洋美術の話。

 両者の関連付けとかは特になく、それぞれのタームでそれぞれの画家や音楽家の紹介がされている本という印象。教養のツボとある通り、スポット的な記述に終止しているため、それを文化につなげる本を書くには資料としては足りない。でもライトな本なので、例えば著名な画家や音楽家について書こうと思うときの入口の資料としてはわかりやすくていいと思う。

 この2ジャンルに絞られているから他の芸術についてはあまり触れられていない。たとえば印象派の登場には持ち歩き用チューブ絵の具とカメラの存在が大きな影響を与えているし、大戦のころにはシネマや反戦文学の影響も大きいところなので、そういった芸術の相互関連する本が読みたい気分。

 そういえば印象派は写真という風景を精緻に写し取るものにたいして写実ではないものを描くために作られた的なことが書かれてあるけれど、これは違うんじゃないかなあとちょっと思う。もちろんその面も否定しきれない部分はあるけれど、当時工房で描くことが前提だった絵画を光の下で絵を見えたものを描くという新しい価値概念を齎したのは写真とチューブ絵の具だ。そしてそのように屋外で描かれた作品がモネの印象・日の出なんかの作品なんじゃないかなと思う。あれは工房では描けなかった類の作品だろう。

 まあ今のAI絵とかChatGTPみたいに当時もカメラに対するアンチは発生したようだけど、いずれ棲み分けができていくんじゃないかなと思う。肖像画なんかの一定のジャンルは衰退したわけですが……。


4.結び

 この本は点でつながると言っても点つなぎで時系列順につなげてるだけなんだけど、西洋絵画と銘打っているのに絵画の写真や挿絵が一枚もないところが潔くて好き。

 あくまでもライトな本なので、ざっとした絵画史や音楽史の内容を把握するには気軽に読めて結構いい本だと思う。


 次回は大岡昇平著『コルシカ紀行』です。

 コルシカってフランスだっけ……あれ?

 ではまた明日! 多分!

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