chapter6 白い部屋
「んっ。」
冬弥が目を覚ますとそこには知らない白い天井があった。
自身の家じゃない。綺麗な知らない天井。しかも寝たこともない程フカフカの白いベット。
「目を覚ましました。」
その時、丁度部屋に入ってきたナース姿の女性が大きな声で冬弥が起きたことを誰かに言いに行った。
「どこだここ?」
体を起こし、周りを見渡す。
部屋には、二つの椅子と白いベット、そして、その横には棚が設置してあり、その上には造花が置いてあった。
右側には硝子の窓があり、外が見えるようになっており、光が部屋を照らしていた。
「そうか、亮は。」
起きたばかりで記憶が混濁していたが、少し時間が経ち、自身の手で亮を殺めたことを思い出す。
「俺が、亮を。」
そんなことを思っていると、病室の扉が開き、中年の男性と赤いチャイナ服を着た男性が入ってきた。
「具合は大丈夫かい?」
中年の男性が話しかけてきた。
「は、はい。大丈夫です。」
よくよく見ると、その中年の男性はあの裏路地にいた所長と呼ばれている男であると気づいた。
「俺は、久並事務所の所長をやっている。久並次郎と言うものだ。」
そう言いながら、名刺を冬弥に渡す。事務所というのは、エクシスタンスに対抗する人達が集まってできた組織のことである。
その時、唐突に冬弥は弟のことを思い出した。
「俺、何日くらい眠ってましたか?」
その問いに目の前に立っている久並が答える。
「3日程かな。」
それを聞いた冬弥の背筋がこおる。
「お、弟がいるんです。家に病気の弟が居るんです。帰らなきゃ。帰らなくちゃ。」
無理矢理体を動かそうとするが上手く力が入らない。
そんな時、横にいるチャイナ服を着た男が口をひらく。
「心配することないネ。弟はこちらで保護したネ。」
独特な喋り方だなと感じながらも弟の無事をしれて、冬弥は一安心し、胸を撫で下ろした。
「
チャイナ服の王雲嵐と名乗った男性も冬弥に名刺を渡す。
「間川冬弥です。」
名刺をもらった冬弥も2人に自己紹介をした。
王雲蘭と久並次郎はベットの横に設置してある椅子に腰をかけると、久並次郎が口をひらく。
「間川くんは裏路地のことを覚えているかい?」
裏路地のこと、エクシスタンスとなった亮の命を俺が奪った出来事。
「覚えてます。」
少し頭を下げ、答えた。
「体に何か変化はないかな?」
(そう言われれば、あんな姿になったのに今はなんとも無いな。)
「いえ、特には。」
その答えに久並は横に座っている王の顔を見る。
「王さん。やっぱり。」
「そのようネ。」
王雲蘭が首を縦に振り、話しかけてきた。
「君には特別な力があるヨ。協会はそう思っているネ。」
「は、はぁ。」
冬弥は何もピンときていないまま、王の話しを聞く。
「事務所に入って、一緒にエクシスタンスと戦ってほしいネ。」
唐突な事務所への勧誘に冬弥は困惑した。
「俺が事務所にですか?」
ついこの前まで裏路地に住んでいて、盗みで生計をたてていた男がいきなり事務所へ勧誘されたのだ。困惑して当然である。
「そうヨ。君の力が欲しいネ。勿論、給料は払うヨ。住む所もこちらが用意するヨ。」
(事務所に所属出来れば、盗みよりも収入が安定するし、住む場所も提供してくれる。そしたら、弟も。それに、亮のような悲劇を未然に防げるかもしれない。)
「わかりました。事務所に入ります。その代わり俺のお願いを1つ聞いて貰えないでしょうか。」
冬弥がベットに座ったまま頭を下げる。
「いいヨ。言ってみるネ。」
「ありがとう。」
バッと頭を上げ、王雲嵐の方に顔を向ける。
「弟をここに入院させて欲しいんです。」
冬弥は再び頭を下げる。
「そんなことなら、お易い御用サ。」
「ほ、本当か。」
再び頭を上げ、王雲嵐を見つめる。
「本当ヨ。僕、嘘つかないネ。」
「ありがとう、ありがとうございます。」
「これで、事務所に入ってくれるネ。」
「はい。」
その答えを聞いた王雲蘭は人差し指をたてて、言葉を発する。
「しゃあ、試験するネ。」
「試験?」
唐突に言われた試験という単語に冬弥は首をかしげた。
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