chapter5 別れは己の手で

「まずいな。」


そんなことを言っている間にも、エクシスタンスの攻撃は止むことなく所長と空崎に降り注いでいた。


(応援はまだなのか。このままでは全滅だ。)


エクシスタンスの猛攻を刀で逸らしながら、隙をつき斬撃をあびせる。


(ダメか。すぐに再生しちまう。空崎ももう限界そうだし、一か八かのかけにでるしかないか。)


所長の持っている刀の光が青色から段々と灰色へと変わっていく。


(制御は難しいが、出力を上げさせてもらう。)


灰色に光った刀の斬撃は先程よりも明らかに鋭くなっていた。


ザッザッ。


だが、それでもエクシスタンスの再生が上回っている。


(これでもダメか。それなら。)


灰色に光り輝いていた刀は、赤い光をはなつ刀へと姿を変えた。


「す、凄ぇ。」


所長の姿を後方で見ていた満身創痍の空崎からそのような言葉が漏れ出た。


赤色に光り輝いている刀の斬撃は灰色の時よりも鋭くそして、はやくなっている。


ザッザッザッザッ。ザッザッザッザッ。


エクシスタンスの攻撃が来る前にその攻撃の元である拳を8当分に切り分け、攻撃の威力を殺し、そのまま懐に入り、今度は胴体を8当分に斬り分けた。


そして、エクシスタンスは8当分の塊となり、その場に崩れ落ちた。


エクシスタンスを斬った所長は苦しそうに息をする。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」


顔は赤色へと変色し、ひらたいと頬から大量の汗が流れ、地面に落ちてい。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」


その姿はまるでフルマラソンを走り終わった選手のようであった。


(やはり、これはキツイな。)


所長は地面に向けていた視線をエクシスタンスの塊へとうつす。


(まさか赤まで使わされるとは、数日は疲労がとれないだろうな。)


『ガ、ガァ。』


「なっ!!」


なんと、8当分にしたエクシスタンスの体がくっつき、起き上がり、拳を繰り出そうとしていたのだ。


「所長!!」


その光景を見た空崎は大声で出した。いや、大声を出すことしかできなかった。


空崎の体は先程の戦闘で満身創痍となっており、動けなかったのだ。


(まずいぞ。赤の反動で動けない。)


それは、所長も同じであった。


『うわぁぁぁ。』


そんな危機的の時、空崎の後方から白い何者かが、突っ切って行った。


「なっ、」


空崎は一瞬何が起きたのか理解出来なかったが、後ろに冬弥の姿がなかったことと、突っ切った者がどこか冬弥に似ていたことから冬弥も狂気したとこを理解した。


「所長!!後ろ!!」


そのことにまだ気付いていない所長にそれを伝えるべく大きな声で警告した。


(何事だ?)


だが、所長に後ろを見る余裕も力も残っていない。


空崎は自身の命も所長の命も加代の命も、ここにある全ての命が失われると思っていると。


ザッ。


狂気した白いエクシスタンスが拳を繰り出している最中のエクシスタンスを斬りつけたのだ。


「「なっ!?」」


2人の口から情けない声が漏れ出した。


『亮。せめて俺が終わらせてやる。』


言葉を発した白いエクシスタンスは同胞であるはずのエクシスタンスを腕に着いている三日月型の刃で斬り刻んでいく。


「喋っただと!?」


そのような光景をまじかで見ていた所長はエクシスタンスが人間の言語を喋ったことに驚愕していた。


そして、それは何も所長だけではなかった。後方で見ていた空崎も同じであり、目の前で起きている意味不明な出来事に空崎は呆然とするしかなかった。


そんな2人のことはお構い無しに冬弥は亮だったエクシスタンスを攻撃する。


ザッザッザッザッ。


かつての親友を。ただひとりの親友を斬り刻んでいく。


冬弥の瞳から涙がこぼれ落ちる。その涙は、白いエクシスタンスの肌を流れ落ち、亮だったエクシスタンスに落ちる。


ポタ、ポタ。


『うおぉぉぉぉぉ。』


雄叫びだけを上げ、ただ我武者羅にエクシスタンスを攻撃する。


ザッザッザッザッ。


『同じエクシスタンスだろ。何故俺を攻撃する?』


亮だったエクシスタンスがこちらに話しかけてくる。


『お前の敵は人間だ。一緒にあいつらを殺そう。』


攻撃をされながらも話しかけてくる。


『俺は冬弥だ。エクシスタンスじゃない。人間だ。』


冬弥は右腕を高らかに上げ、力をためる。


『さようなら、亮。お前は俺の唯一の親友だ。これからもずっとな。』


ドンッ。


鈍い音が裏路地に響き渡った。


亮だったエクシスタンスは跡形もなく消滅し、そこには冬弥がつくったくぼみだけが残っていた。


バタッ。


エクシスタンスを倒した冬弥は力なくその場に倒れ、意識を手放した。


冬弥の体は段々とエクシスタンスから人間へと変わっていき、最終的には元の冬弥へとなった。

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