第3話 タイツを履いた少女っていいよねって話

 もう終わってる春の気温とちょっと早い梅雨の湿気が蔓延ってくる時期に僕は、ヒカリのクラスの教室で……。

「ここでするの……。」

「そうするの。」

 白いタイツを履いたヒカリがその両脚で僕を捕らえている。

タイツから透き通る健康的な肌が見え、頑張って視線を正面に向けてもスカートから覗く光景で脳が焼かれそうだ……。

(どうしてこうなった……。)

 しばし思考をめぐらして思い出してみようと思う。


(☆)


 あれは舞依とのソーシャルゲーム……いわゆるソシャゲのキャラクターの談議のこと……。

「雫さんはどのキャラが好きですか?。」

 舞依が提示してくるとあるソシャゲのキャラ一覧。

僕もやってるゲームでもあってそれなりには揃っている。

「私はこの子かな。このタイツの子。」

 僕が示したのは白いタイツに白い制服、ピンク色のロングヘアにピンク色の天使の輪っかようなものが頭に浮かんでる少女。

情緒不安定で、愛の重い女の子。

どこかしらヒカリに似ている部分を感じる。

「へぇ〜、意外ですね。私はこの子です。」

 舞依は髪の色こそ同じだが、僕が見せたものとは違って少しゆるふわな生徒会長キャラ。

皆の憧れの優等生という感じの、ヒカリの外殻のようなキャラだった。

「それにしても、雫さんってタイツを履いた髪の長い子が好きですよね。」

「うん……、そうだね……。」

 実はもう一人いる。

青く白い長い髪に、黒いブラウス、白い制服に黒いタイツの少女。

どこかしら紗奈に似た雰囲気を感じる女の子。

気のせいのはず……。


(☆)


 そんな話をした翌日のこと。

ヒカリは白いタイツを、紗奈は黒いブラウスに黒いタイツを着たり履いたりしてきた。

いや、昨日今日で準備するの早くない……。

「雫。どう、似合う。」

「雫さん。」

 見せつけるように僕に迫ってくる二人。

顔と容姿が良いだけに……。

「二人とも可愛くて似合ってます!。」

思わず大きな声で言ってしまった。

「ふーん。」

「うへぇへ……。」

 ヒカリは少し残念そうに。

 紗奈はとろけるような笑顔で。

こう並んだ反応を見ると(なにこれ)という気持ちになってしまう。

紗奈は少し浮き足立って席に着いた。

「ヒカリ?。」

「…………。」

 一方のヒカリは……、少し納得出来ない様子で僕を睨んでくる……。

他人の言葉は社交辞令としてスルーするくせに、僕の言葉はそのまま受け取るのなんとかして欲しい……。

「放課後……、私の教室で……。」

 小声で予定を伝えたヒカリはあっという間に教室を出ていった。


(☆)


 で、今にいたるわけで……。

嫉妬が常時ダダ漏れなのよ……。

それに見せつけるように机を椅子にして、僕を床に座らせるし……。

「まさかここでするって言わないよね。」

「えっ?、そうだけど。」

 何当たり前って顔で見てくるの……。

睨むような無表情で冷たく見てくるその顔は……、まあいつも通りなのだけどね。

「学校では禁止って言ったよね……。」

「『それ』は中学生までの話でしょ。高校生からのは『契約』に含まれていないでしょ。」

 それは……、そうなのだが……。

いやだって普通、高校生にもなってやるとは思わないじゃん……。

「はい、わかった。」

「素直でよろしい。」

少し勝ち誇ったような笑みで僕を見下すヒカリ。

そんな独裁者に反旗を翻すように私は勢いよくヒカリにキスをする。

「っ!?。」

 流石に驚いた様子でのけぞろうとしているところを右手でヒカリの身体を支えて、左手を机に置いて全体を支える。

「んっ!。」

「っ!?。」

 直ぐに反撃に転じるあたりは流石で……。

倒れそうになって支えているのをいいことに、脚で身体を固定して腕と手で思いっきり深く押し込んでくる。

 何故か最近のヒカリはずっとこう。

僕を手放したくないと言わんばかりのスキンシップに正直疲れてしまうところもあるけど、それでもそのままにしていけない気がする。


(☆)


 長い時間が経った気がする。

空は紫色に変わり、窓から太陽の光が直接降り注いでいた。

「ぷはぁ……。」

「ふふっ。」

 ようやく解放された僕は特に意味もない威嚇でヒカリを睨むも全く効果ないどころか、満面の笑顔でむしろバフを与えたみたいだ。

「やっぱり高校でも禁止。」

「あら、残念。」

 少し落胆したように視線を下ろすヒカリ。

なんか申し訳なくなってしまった……。

「じゃあさ……。」

「何?。」

「私をこんな気持ちにした責任は、もちろん取ってくれるよね。」

「はいはい、何でも言って……。」

 口にした言葉には責任が伴う。

たとえそれが些細なことだったとしても……。

「じゃあさ。週末に、私とデート……してくれる?。」

「あ〜、はいはい。…………、はい!?。」

 ここで僕はようやく理解した。

と同時にやってしまった。

ヒカリに対して「何でも」はある意味禁忌である。

そんな後悔とともに場所の選定を始める。


次回、デート回。

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