第2話 日常の断片
ピーピーと電子鳥が囀る朝。
僕を起こしたのはそんな電気的な音波ではなく、有機体の温もりのある物理的な重みだった。
「あっ……、やっと起きた……。」
「おはよう……、ヒカリ。」
大好きな下僕を布団にする猫のように僕に乗っかるヒカリ。
胸には頭の感触、腰あたりには胸の質量の感触。
「ヒカリ、邪魔、起きれない。」
「やだ……。しばらくこのままにして。」
「はぁ……。」
思わずため息が出てしまった。
こうなってしまってはテコでも動かないし二度寝コースだ。
この手段はあんまり使いたくはないのだがね。
「ずっとこのままでも良いけど……、このままだと……『
「っ!?……。」
ヒカリは慌てて僕の上から離れる。
目は常に視点を彷徨い、恐怖と似たような別の感情が彼女から溢れ出ている。
自己暗示をかけるように……いや、文字通りの自己暗示。
「おはよう。ヒカリ。」
「おはよう。雫。」
僕は鎮めるようにヒカリの頭を撫でた。
すると彼女はいつものように星の見えない夜空の目に戻った。
僕にだけ見せるその瞳は深淵のように引き込んでくる。
僕はヒカリの監視の元、制服に着替えている。
白いブラウス、白いブレザー、マイクロミニスカート丈の白いスカート、アクセントに制服には水色のラインが入っている。
そして後は青いリボンタイを残すだけになったところでヒカリに後ろから抱きつかれる。
「ヒカリ……。」
ぎゅっと拘束を強めるせいで制服越しに胸が強調される。
ヒカリは……はっきり言って性的に僕を見ている。
胸……腰……腕……脚……顔……表情や目の動き……はたまた指一本一本の繊細な動きまで、まるで獲物を観察する肉食動物のように……。
いつからだろうか……彼女にこんな風に見られるようになったのは……。
覚えている限りでは中学生になった頃から特に露骨になった気がする。
「んっ!?。」
不意打ちで背後からキスを許してしまった。
間髪入れずにヒカリは右手で私の胸を触り……左腕で腰を拘束している。
入念に舌で僕の口内を掻き回し、丁寧に感覚を侵食……再構築してくる。
胸だってそう。
小柄な身長に大して程よく豊満な成長したのは、盆栽の如く日々身体を触るヒカリのスキンシップの賜物だった。
まあ……教えたのは僕なんですけどね……。
「っ……はぁ……、満足した……。」
「うん。とっても。」
上機嫌に人差し指で自分の口を触るヒカリ。
完璧を擬人化したような彼女が何故か僕にだけ見せる生物的な性欲求。
相変わらず真意が分からない……。
おそらく僕のことが好きなのだろうが……。
「どうしたの雫?。遅刻するよ。」
何食わぬ顔で僕の部屋を出るヒカリ。
星の灯った星空の瞳の彼女は桜色の綺麗な長い髪をたなびかせて、1階のリビングへと降りて行った。
「はぁ……、全く勝手なんだから……。」
そうため息を漏らしながらヒカリに乱された制服を整えてリボンを付けた。
そして
(☆)
教室に着いた僕は通学の疲れからか、机にぐったり顔を埋めていた。
僕とヒカリは片道一時間の電車通学なのだが、通ってる高校が住宅街とオフィス街に挟めれてるあるため、当然のことながら人でいっぱいである。
それだけならまだ転生前からある程度経験してたから良かったが……ヒカリが僕を守るように密着してくるせいで余計に疲れてしまった……。
「今日もおつかれですね。雫さん。」
「うん……。あぁ……、おはよう紗奈。」
「はい。おはようございます。」
青白いセミロングの銀色の髪に蒼い瞳の少女【
彼女は中学生からの付き合いで、同じクラスになるのもこれで三年目に突入している。
「お、おはようございます。雫さん。紗奈さん。」
「ん、おはよう。舞依。」
「おめでとうございます。舞依ちゃん。」
そこへ白金のお下げのツインテールに翠色の瞳の少女【
彼女はこの学校の受験の時に初めて知り合った子で―。
「はぁ〜、今日のヒカリさんも綺麗でした。」
そしてヒカリの熱狂的ファンである。
まあ、星を灯した星空の瞳の時の彼女はまさに異性、同性関係なく憧れる美少女なのだが……。
普段を知ってる僕としては違和感が強いのも事実である。
本当に……、なんで僕だけなのだろうか……。
きっかけは色々思い当たるのが妙に抵抗してしまう。
「おはようございます。皆さん。」
聞き慣れた声が背後から聞こえる。
噂をすればなんとやら、ヒカリがやってきた。
人気者の彼女が自分のクラスメイトをほっぽいて『何故か』僕のいるクラスにちょくちょく顔を出している。
「お、おめでとうございます。」
「そう緊張しなくていいのよ。」
「おめでとうございます。星野さん。」
「はい、おめでとうございます。」
ヒカリと舞依はよくある高嶺の花の美少女とそれに憧れるモブ少女といった感じだが……。
ヒカリと紗奈は明らかに牽制し合ってる。
お願いだから僕の上空でドッグファイトしないでくれ。
キーンコーンカーンコーン
朝のホームルームも告げる電子的な鐘が校内に響き渡る。
それを合図にみんな大人しく席に着いた。
無論ヒカリも例外ではない。
「じゃぁ、私はこれで。」
ヒカリは少し寂しそうに教室を出ていった。
彼女は一時も欠かさず僕の近くいたいのだろう……。
それが嬉しくも悲しいのだけれど……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます