第23話 彼ら秋の葉のごとく群がり落ち、狂乱した混沌は吼えたけり

 《視点 高砂》

 

 深夜である。

 私は生徒会長の少年と連絡を終え、すぐさま調べものを行う為に自宅の書斎に赴いていた。職場であり事件現場である学校周辺で“少女の撮影会に利用出来るような施設”は存在するか否かの確認だった。地図を広げ、赤ペンで色々と書き込むを繰り返す。

 (ん。ふむ、少女偏愛というのは趣向や性癖ではなく幼少期のトラウマを起因する病であるとは言われるが。それを解っていたのか知らずにしていたのか。なかなかに末恐ろしい女の子だったわけか。その撮影会立案者がプールに沈んでいた。間違いなく撮影会が動機であると考えて良いだろう。しかしこの場合に考えられる状況は“どちらが恐れていたのか?”だね。被写体である女子生徒なのか、買い手側なのか)

 両方、だろうけれど。

 しかし女子生徒が女子生徒を殺すにしろ自殺に追い込むにしろ、イジメをしていた少女もまた被写体であるわけだ。既に結構な回数を行い稼いでいた彼女達が急にイジメる側へと回るとは考え難い。遊ぶお金が好きな女の子が大きな稼ぎを失うというのはストレスになる筈なのだ。それなのに彼女等は手のひらを返して立案者を不登校に追い詰めた。

 

 撮影会そのものを立案者一人の過失にしようとすれば。参加者は罪を免れるとでも刷り込まれたか?嫌だったけど脅されて、とでも話せば世論は同情票を産むだろうし。

 但し、その考え方は当事者の子供に浮かぶ発想ではないだろう。児童ポルノ禁止法なのか風営法なのかは知らないが、グレーゾーンというかなんというかの領域の中での話だ。領域外から眺める誰かでなくては、抜け道を示すも出来まい。


 ならば少女達を煽動した何者か。

 その者こそ。

 撮影会が世間に露見するを。

 恐れている。

 可能性が、ある。


 (ん。家内が生前話していたっけか。“自分が女である事を利用出来る時期は短いけれど、若いうちだけだからと自己正当化をするような未熟な女子こそ危険だ”とかなんとか。まあ、若いからこそ火遊びってのは少しばかり不真面目が過ぎるかもしれないねえ)

 学生と撮影会を行うとして。

 ホテルやモーテルは論外だ。

 目撃されたら言い訳が出来ない。

 プラスして人目につかないを条件に。

 見られたくない筈なのだ。

 買い手は。

 料金支払いが発生するような施設がそもそも痕跡として残る。

 地図から空間をサービスに使う施設を抜粋しているが、こんな田舎町である、それほど数は多くない。撮影会場までの移動を買い手のクルマで行っていると仮定しても、片道一時間程度だろう。となると片道50キロ。学校から半径50キロ程度の位置に、何かあるのかもしれない。

 学校にブスリと針を刺し、半径50キロに設定。見易い緑色の蛍光ペンでグルリを染めていく。三つ先の町。大体、そんな感じではあった。

 (ん。人目につかないという条件を此処まで満たすか。あの学校は山に囲まれている。これは、盲点だったねえ)

 少女の下着姿を撮影出来て。

 料金支払いが無く。

 人がそもそも居ない場所。

 その条件を満たす施設。

 そう。

 寂れた無人キャンプ場ならば。

 幾つか。

 点在していた。

 (ん。この情報は警察にリークしておいた方が良いかもしれないねえ。山奥の無人キャンプ場がパトロールに入るなんてなるのは同情しちゃうけどさ)

 まだ可能性の段階だが。

 そういえば。

 学校関係者にもキャンプに使えるようなクルマを使っている職員が何名かいる。ワンボックスカーであれば、車内で撮影も可能だ。見つかったとしても逃走は易い。

 (ん。嫌になるね。変態がプール事件の犯人でしたで終わってくれたら楽なんだが。そうも行かないだろうなあ。大人と子供が共犯の事件だからねえ)


 そうなのだ。

 プールの事件。

 銅像の事件と構成が同じなのだ。

 無関係であって欲しいと願う。

 別問題であって欲しいと願う。

 だが、そうはなるまい。

 この二つの事件。

 私は関係性があると確信している。

 

 (ん。こりゃ少しばかり夜も動いたほうが良さそうだ。無人キャンプ場、行ってみるとしようかな。運が良ければ、いや、運が悪ければ。件の撮影現場に出会すかもしれない)


 出会したらどうするか、は。

 決めてなかったがね。

  


 

 

 

 

 


 



 

 

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