第17話
結局のところ、人間は楽な道を探してズルをする生き物でしかない。完全に穀物を断った後に松の樹皮だけを口にして座禅を組んだとして、それがどう意味するのかなどは当人にしか解らない話であるし。同じく洞窟で水分が抜け落ちるまで瞑想をしたとしても悟りを開いた本人にしか答えは見つからない。苦労をするコストパフォーマンスが見え難い。即身仏にコストパフォーマンスなんか罰当たりだと思われるかもしれないが、先達として誰より解りやすい一例だとボクは思うのだ。
真面目さは自分を救わず。
真面目である印象だけが周囲に機能する。
だから隠れてズルをしたがるのは仕方がない事なのかもしれない。チート行為を犯罪だと認識せず使えるツールを使わない方が悪いなどと考える者は大人でも少なくはない。
それでも楽な道を歩めば自分は弱いままになるので、若い頃の苦労は買ってでもしろという言葉に繋がるのだろうがね。
ま。
苦労してないと本物には成れない。
歩も敵陣地まで進んで漸くだ。
「まー。不真面目の極みすね。不真面目というか欠陥品です。親の顔が見てみたいぜ」
「いや、面白山も不真面目属性だからな?」
「私は不真面目を全面に出してますもん。視える所は真面目で視えなくなったら不真面目でって、学校んときはスカート丈を守るけど下校時になったらミニスカート仕様に制服を変える田舎の女子高生かお前等はと!」
「面白山の例え話は一々が古いんだよな……。今、令和だぞ……?」
「同じ女子高生として情けないす。アイツ等がやってたのって、パパ活一歩手前じゃないすか」
「下着姿での有料撮影会、なあ……」
児童ポルノ禁止法とかに引っ掛かるかどうかは解らない。その辺りはお巡りさんに調べて貰う他無い。客になった男性を強請り高額な代金を要求していた、とも調べはついた。女子が生きる為の知恵だと悪怯れもしなかった生徒にはイップ・マンの代名詞である寸勁を叩き込んで黙らせておいたが、此処までモラルの低下が著しいとは思わなんだ。
確かにモラルは金にはならない。
しかし信用や人格を支える柱だろうに。
だけど。
このエロエロ有料撮影会が隠したい事実だとして、それを告発した被害者が死ぬ理由になっているのかは疑問が残る。教員側は確かに停学処分を与えているし、家庭にもその旨は伝えている。
でも、それだけだ。
被害者が望んだのは。
それだけか?
もしもボクが被害者のような性格で女子グループに入れず孤独に苦しんでいたとして。
加入する事になったその女子グループを告発して自身に何が戻るのだろう?
「エロエロ撮影会の無理強い、か?」
「それは私も考えました。撮影の強要をしたのであれば恐喝ですし、もし暴力が伴っていたとすれば傷害でしょう」
「けど、撮影会を初めたのは被害者だ」
「其処なんすよ。イジメの理由になってない。皆でラクしてお金儲けをしていたんす」
「んじゃイジメっ子のが被害者かといえばそれはないわけだ。仲良くしていたのが急に仲間割れした。其処の何故を知りたいのに、彼女達は先生に話したからしか言わねえ」
「撮影会の客が、先生だった!とか?」
「面白山ってホント、おっかねえ話をするよな……」
「こりゃ『先生』ってのにも話を聴く必要が出てきましたね。大人が絡む場合、高砂さんに任せるしか無さそうですけど」
そう。
相手が大人の場合、生徒会というカードが切れない。
同じフィールドに立てない。
デュエルが成立しないのだ。
「一度帰るか。ボクはこのまま自宅に帰るようにする。明日から臨時休校だ。朝イチで中華料理・面白山に向かうようにするよ」
「結局、なんにも解らなかったす。くたびれ儲け!」
そして。
物語は高砂さんパートへ。
此処までの物語をセーブしますか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます