7、ダンジョンハックは甘くない

 塔ダンジョン、第一階層。

 ここは俗に『教習所』と呼ばれていた。教習所、と言えば車やバイクの免許を取るあれが思い浮かぶが、ここもそれを同じ意味を持っていた。


「せあああっ!」


 紡の掛け声とともに、相対していた敵が粉々に砕け散る。

 この一階唯一の敵、結晶ゴーレムだ。

 不透明な水晶のようなものでできた、百五十センチぐらいの戦士の像。盾と剣を持ってこっちを追い回してきた。

 とはいえ、この程度の相手を倒せなくては、ダンジョン攻略もままらない。


「よしっ、快調快調っ!」

「なんだ。ゴミ焼きばっかりしてるから、腕が鈍ってるかと思ったのに」


 構えていた銃をしまい、つまらなそうに柑奈かんながぼやく。周囲に散らばった、三体のゴーレムの残骸を眺め、つむぐが尋ねてきた。


「拾ってく? これでも立派な交換素材だぜ?」

「いいよ。しおりちゃんが提案しなかったんだ。交換レートが悪いんだろ?」

「その通りです。とはいえ、量を取ればそれなりにはなりますよ」

「今は速度が命だ。荷物は軽くしたい」

「もったいないけど、しかたないか」


 一階には仕切り壁はあっても扉はなく、玄室と呼ばれる部屋は作られない。

 結晶の戦士も、廊下ではなく広がった空間だけで出現するようだ。


「戦闘音も、あらかた静かになったね。んじゃ、クリアってことで、階段さがそっか」


 荒事が終わった石造りの空間は、しんと静まり返っている。自分たちの足音以外は、壁に掛けられた松明の燃える音だけだ。

 塔に挑む者は、最初にこの雰囲気に慣れ、敵との戦闘を経験して意識を切り替える。

 初回から、とんでもない敵を出すことが無いという点も、作為を匂わせていた。


「空気が変わりましたね」


 しおりちゃんが翼をかざし、羽毛がなびく方向を指し示す。こっちの鼻面も、敏感に変化を察知していた。


「そういや、げっ歯類も鼻がいいんだっけ。いつまでも人間気分じゃない方がいいな」

「こっちのバカイヌは探索下手だけどね。鼻も利かないし」

「いや、ちゃんと変な匂いとかは分かるぞ? ただ、嗅ぎ分けが苦手ってだけで……」


 今の俺は、このパーティで最弱な存在だ。戦闘やフィジカル面で役に立てなければ、五感や注意力で貢献するべきだ。

 上に昇る階段の前にたどり着くと、先行していた連中が、塊になって立っていた。


「おーい、何かあったのか?」

「……いや、何かあったってわけじゃない、けど」


 俺たちよりも良さそうな装備を付けた面々は、それでも微妙な笑みを浮かべて、道を開けてくれた。


「早く行きたいならどうぞ。譲るからさ」

「……ああ、そういうことか」


 俺は顔をしかめ、ため息をついた。

 要するに、こいつらも『コバンザメ』をやりたいわけだ。この上からはダンジョンの難度が変わるから、少しでも他人に厄を押し付けるために。


「そんなことだろうと思ったわ。はいはい、そこどいてね、お雑魚たち」

「押し付けるのも嫌だけど、こういう風にされるのも、もにょっとくんなぁ」


 やはり、そう簡単にはいかないか。ここにいる彼らにとって、ダンジョン攻略は『生活費稼ぎ』に過ぎない。

 一階の敵を掃討したら、美味しい階層だけ手を付けて、すぐに離脱する。

 後は所属ギルドに上納しつつ、プラチケを貰う算段なのだろう。


「あんなことして、何が楽しいのかねぇ」


 第二階層へあがり、階段に透明な幕がかかったとたん、紡はあからさまに毒づいた。


「折角、ダンジョンに入れる実力もメンツもいるのに、メインも進めずスカベンジャーハントかよ」

「言ってやるなって。俺だって、期限付きじゃなかったら、同じことをしてたさ」

「すかべ……?」


 不思議そうな文城ふみきに背負い袋を渡すと、今朝がた貰った紙束を手に、先頭に立った。


「ゴミ漁りって意味の英語だよ。MMOとかだと、アイテム集めのクエストだっけ」

「そーそー。日本のだとあんまないけど、海外だとメジャーだぜ。向こうに居た時、ビーストフォーマってゲームをやってたら――」


 片手を上げておしゃべりを終わらせると、俺は手にした棒を先に立てつつ、ゆっくりと歩く。

 しおりちゃん謹製、階層ごとのトラップ一覧を手に、確認を進めていく。

 この世界に、便利なスキルなんて存在しない。トラップの発見や解除は当然、個人の経験と勘が頼りだ。

 トラップの発見と解除を専門とする『解除屋リムーバー』がいるそうだけど、そういう連中は、高額な依頼料が必要で、それでも予約が一年先まで詰まっているとか。


「よし。今俺の居るところまでは安全だ。余計なものには触るなよ、壁なんかは特に」

「前言撤回。俺、チキンでいいや……胃が痛くなってきた」

「いっそ、あたしが先まであるってこうか?」


 もちろん、金属の体である柑奈かんなには、並のトラップは通じない。

 でも、


「酸性の毒霧や、転がる岩のトラップなんかあったら一巻の終わりだろ。貴重なアタッカーを危険には晒せない」

「ふーん。リーダーがそう言うなら、いいけどね」


 それにしても、ホントにキツイなこれ。 

 ここに入って五分ぐらいだが、神経がすり減って仕方がない。


(最初に床、次に天上、その後に壁、一往復したらまた床、か)


 ダンジョンの光景は極めて単純で、明かりも心もとない。わざと陰影を濃くして、踏みつけると発動する、罠のスイッチを見えにくくしている場合もある。

 下から上へ、上から下へ視線を振るのは、『間違い探し』の要領だそうだ。

 似たような絵柄の間違い探しも、視線を振ることで『違い』が見つかることがある。

 凝視するより、全体を見回すように。


「孝人さん、足元です」

「え」

「貴方の二歩前、丸石の突起が」


 っぶねええええええっ。

 敷かれた石の間に、わずかに盛り上がった丸い石。うっかり手にした棒か、自分の足で刺激するところだった。

 それから、いくらか距離を置いて、点々と丸石のスイッチがあった。


「石弓か毒ガス、槍の雨、か?」

「壁に気孔やスリットなし、敷石に等間隔の設置なし、多分上です」

「あー、あれか」


 薄暗い天井、目を凝らすと模様のように見せかけた、小ぶりの穴がある。


「作動解除は無理ですね。避けて進みましょう」

「フォローありがと。間違えたらガンガン突っ込んでくれ、先生」

「――はい」


 まるで、地面を匍匐前進するような、じりじりした時間が続く。

 さっさと通り抜けられるところもあるが、そこを過ぎた途端に、槍や毒針、石弓の雨が降り注ぐ地帯が続く。


「いきなり難度、上がり過ぎだろ!」

「リーダー。実はこのくらい、全然大したことないんだよ。上に比べたらね」

「……ああ、引率屋なんて商売があるのは、そういうことか」


 つまり、初心者にはつらいが、ある程度慣れてしまえば、この階層のトラップなど、ものともしない連中がいるわけだ。

 それでも、ここは俺が率先して動かないといけない。


『トラップの発見は私もできます。孝人さんが無理にやる必要は』

『しおりちゃんはパーティの知恵袋で、貴重な魔法使いだ。それに、今後のためにも、俺が覚えておきたい』


 何度も角を曲がり、艶消しされた金属のワイヤーを切り外し、俺の鼻面と大きな耳が、上と下で行き来する、気流を感知する。


「たぶん、この先が出口だ。ちょっと、角を先を見てくる」


 軽く首を差し込むと、上へあがる階段に続く、一本道がある。

 ああいう不自然な開けた空間は、落とし穴でも――。


「リーダー、上!」


 総毛立つ悪寒に、体が思いきり背後に跳ねる。ぐしゃり、というような濡れた音が、ちょっと前まで俺のいた場所に降ってきていた。

 それは、全身にウニのような棘を生やし、丸く牙の生えた口をこちらに向けた。

 悪臭と共に伸びる触手。俺の腰までありそうな、バカでかい怪物。


「くっそっ」

「下がって!」


 耳朶を撃つ破裂音と、マズルフラッシュ。体液が飛び散って、気持ちの悪い生き物は体液を漏らしながら崩れ落ちた。


「『死肉漁り』ですね。触手から麻痺毒を分泌し、噛み傷から感染症を媒介します。すみません、気づけませんでした」

「それにしても、毎度キツイなこの臭いっ! 死んでも害悪かよ!」

「早く通り抜けよ! こんなとこ一秒も」


 身を乗り出した柑奈かんなを棒で抑え、怪物を避けつつ通路に戻る。


「三分我慢しろ。トラップチェックが先だ」

「うえぇ、最悪」

「次から周辺の索敵も頼む。たぶん、さっきのアレも『トラップ』だ」


 おそらく、指定の通路でしゃがみこんだり、動きが止まった奴の上から降らしてくるタイプだろう。もしくはダンジョンに巣くうモンスターが、こっちの行動を学習したか。


「いつもは、ただ見てるだけで良かったけど、自分でやると、こんなに面倒なの……」

「仕事なんて、みんなそんなもんさ」


 片手にした棒と指を使って、目の前の地面の水平をチェック。鉛筆を一本取り出し、壁と床の接触面に差し込んで、不自然な隙間がないかチェック。

 ついでに、床を叩いて反響をチェックする。


「安全確認終了。念のために壁際を歩いてくれ」


 胸から金時計を取り出し、時間を確認する。時刻は八時十三分、まだ入ってから一時間くらいしかたっていない。

 全員が階段下に到着すると、俺は深々と息をついた。


「十分休憩だ。座らず、気を切らさずにな」




 静かで胃の痛くなるような二階に比べ、三階は思い切り騒がしくなった。


「か、勘弁してよ! あたし、虫は駄目なんだってばぁっ!」


 薄暗い空間に広がるのは、うっそうと茂る木々の壁と、湧き出てくる虫たち。


「お前だってこの階層を通り抜けてたろ!? なんで今になってビビってんだよ!」


 アタッカー二人が悲鳴を上げつつ対峙しているのは、俺の体なんて真っ二つに千切り落せそうな、大きな顎のアリたちだ。


「引率の時はスリープモードだったし! アンタと一緒の時は、前に出なくてよかったから目をそらして――うわああ、くるなってばあっ!」

「ダメです柑奈かんなさん! そっちは――」


 でたらめにばらまいた銃弾が、木の壁に巻き付いた大きなつぼみに着弾した瞬間。


「『硬装竹こうそうちく』っ!」


 叫びと共に、地面から無数の黒い竹が生い茂ったのと、耳が潰れそうな破裂音が響き渡ったのが同時。

 やや遅れて、竹壁の向こうでアリたちが断末魔を上げた。


「え、あ、助かった?」

「いきなりなんだ!? この変な竹みたいなの!」

「説明は後です! 早く出口を探さないと、他の虫が!」

「で、でも、あたし、これ以上無理!」


 その場で足をすくませたメイドを見て、俺は最後の手段を取った。


文城ふみき! 柑奈かんなを抱きしめて移動してやれ!」

「え、で、でも」

「いいから早く!」


 相手の返答も待たず、肉厚の腹に顔をうずめる柑奈を確認すると、周囲を警戒しつつ突き進んでいく。

 通り過ぎながら、さっき破裂した妙な植物について、しおりちゃんが解説する。


「カホウセン、外部からの刺激で破裂して、ものすごく硬い種を飛ばす魔界の植物です。喰らったら命はありません」

「それを防いだあれも、魔界の?」

「はい、『硬装竹こうそうちく』って名付けました」


 幸いなことに、この階層に仕掛け罠はなく、階段もすぐに見つかった。なにより、階段自体は一種の安全地帯で、ここまでモンスターは入ってこない。


「ああ、もうダメ、ふみっちのお腹で眠りにつきたい……」

「っとにだらしねえなぁ。いつものでっけえ態度はどうしたんだよ!」

「うっさい! 完璧より欠点のある美人の方が魅力的なの!」


 終わってみれば大した問題もなく、三階まで到達できた。

 いや、まだ三階しか来ていない、ともいえるか。


「敵の数が少なかったけど、先行した連中がやってくれたのかな?」

「かもしれません。騒ぎを聞きつける虫も少なかったので」


 全員の息が整うのを確認すると、しおりちゃんが先頭に立ち、先を指し示した。


「次は第四階層、お二人はご存じでしょうが、十階までの階層で一番面倒なところです」

「あー……うん。みんな言うよね。あたしもここは、三階とは別の意味で嫌」

「むしろ、六階よりも四階を焼いたほうが、まだよかったかもな―」


 経験者の二人が口を揃えて言うんだから、そうとう面倒なんだろう。全員の意思を確認すると、鳥の少女は手にした銀の羽かざりを、自分の翼に当てた。


「宿れ『灯輪葛とうりんかずら』」


 さっきの竹と同じく、あっという間に翼の一部に蔓のようなものが絡みつき、ほんのりとした灯りを放ち始めた。


「第四階層は闇の領域。灯りが弱まり、視界が狭まるエリアです。でも、この『灯輪葛とうりんかずら』はその影響を受けません」

「それじゃ、あいつらから不意打ちされなくて済むじゃん!」

「マジ便利だー。しおりってほんとすげーな」


 あいつら、というのは次の階層に出てくる敵だろう。おそらく夜行性で光に弱い、そこを通り抜けるために用意した植物ってことか。


「魔界の植物って便利だなあ。しかも、それを自由に操れるとか」

「いえ、操ってないです。あくまで『生やしただけ』」


 生やしただけ、ということは。


「例えば、さっきのカホウセンを武器にしたりとかは?」

「無理ですね。蕾がつく方向を決められないので」

「あの竹も、生えっぱなしなのか?」

「はい。次に来る人には、かなり邪魔だと思います」


 話している間に、しおりちゃんの腕に巻き付いた植物の光が強まっていく。

 まさか、このまま爆発――


「えいっ」


 ぱしん、と手にした羽かざりで蔓を叩くと、それは光を失って地面に落ちた。それを、鋭い蹴爪で切り裂いて、始末してしまう。


「『灯輪葛とうりんかずら』は一種の寄生生物で、動物に巻き付いて光を放つ性質があります。そして一定時間過ぎると、巻き付いた生物の体液を吸うんです」

『えええええっ!?』


 思わずドン引く俺たちに構わず、しおりちゃんは自分のに蔓を巻き付けた。


「体液を吸われた生物は身動きが取れなくなり、葛はその光を増します。そして肉食の生物を惹きつけ、近づいてきた新しい宿主に、自分の種を植え付けるんです」

「いや、その、しおりちゃん。それ、ダイジョブナンデスカ?」

「はい。この蔓は衝撃に弱いので、ちくっとしたら、ぱしっ!」


 ぱしん、と叩き落として、再び蹴爪で蔓を始末する。

 あまりに手慣れ過ぎているのは、同じことを何度も繰り返したせいだろう。


「こうすれば被害はありません。この植物自体には毒性はありませんし、寄生された生物の死亡原因も失血性のものですから、対処さえ間違えなければ有用ですよ」


 年齢に似合わない冷静さと知性、礼儀正しさ、どこをとっても完璧なしおりちゃん。

 だが、この子の中味は、かなりヤバかった。


「ということで、皆さんにもこれを」


 俺たちはいっせいに、首を横に振った。


「でも、このままですと、次の階層で『シャドーストーカー』に、身ぐるみはがされてしまうことになりますが」


 などと言いつつ、またぱしん、とする。なんでそんな、淡々とできるんだよぉ。 


「だって! 血ぃすうんだろそれ!? やだよそんなの、絶対やだ!」

「ぼ、僕も、注射とか苦手」

「そんなに痛くありませんから大丈夫ですよ。血を吸うと言っても、タコの吸盤に、ぎゅっと吸いつかれているくらいの感じで」

「なんで微妙に想像しやすい表現すんの!? ぜってーヤダーッ!」


 困ったように首をかしげるしおりちゃんと、みんなの気持ちを分からんでもない心。

 だが、俺の天性たる『ブラック社畜のゴリ押しセンス』は、答えを見出していた。

 

「安心しろ、みんな。我に秘策アリだ!」



 第四階層、通称ダークゾーン地帯。

 あらゆる光源を弱めて視界を閉ざし、闇に紛れて冒険者を襲うモンスターの巣窟が。

 今、満艦飾の輝きに満たされていた。


「うおおお、明るいぃ! てかちょっとまぶしいな!」

「私もこんなに光るのを見るなんて、初めてです!」

「道が見やすくなって良かったねぇ」


 口々に歓声を上げるメンバーたち。いやあ、仕事で成果を出すのって、ほんとにいいもんですなあ。


「オイ」


 そんな感慨をぶち壊す、ドスの効いた怒声。

 全身を、光る蔓草でぐるぐる巻きにされたメイドロボは、緑のカメラアイをビカビカ光らせて、俺を睨みつけた。


「帰ったら覚えてろ、このクソドブネズミ。八つ裂きぶちまけパラダイスな」


 素早く文城ふみきの後ろに隠れると、俺は取りなすように笑みを浮かべた。


「ほら、そのピカピカの体で、お前の大事な文城が守れてるんだぞー。文城だってメチャクチャ感謝してるよ、な?」

「う、うん。ありがとう、カンナちゃんっ」

つむぐもしおりちゃんも、もちろん俺もだから!」

「そーそー。マージで感謝だって! さすがは超有能メイド!」

「しかも『灯輪葛とうりんかずら』の新しい性質まで見られました! 本当に、ありがとうございます!」


 ギリギリの理性で笑いの顔を造った、怒れる鋼鉄鬼神が、荒々しく床を踏みしめて進んでいく。

 その輝きの端、青白い肌の魔物が、怯えた視線で俺たちを見送っていた。



「んで、ホントに、お前らだけで、大丈夫か?」


 ぐりんぐりんと、かったい柑奈のヒールに、土下座した後頭部を踏みにじられつつ、俺は確認した。


「むしろ今、あたしの視界に入ったら、殺すからね」

「頼むぜー、俺のことは撃たないでくれよ?」

「一発だけなら誤射かもしれないって、なんかで見たわ」

「その一発で、下手すりゃ死んじゃうんですけど!?」


 五階に向けて伸びた階段、その向こうは例のボスがいる階層だ。俺たちが行っても役には立たないが、せめてしおりちゃんだけでも。


「全力でやるあたしについてけるの、この中でこいつだけだから」


 新たに取り出したマガジンで換装し、振り返りもせず階段を昇る柑奈。


「お前の無茶なんて、誰も付いてきたくねーんだよ。こっちは死なないだけで精いっぱいだっつの」


 剣を引き抜き、邪魔だと言わんばかりに鞘を放り捨てる紡。


「うっしゃあっ、久しぶりに暴れるぞぉ!」

「あたし渾身の八つ当たり、喰らって木っ端ミジンコパラダイスになれ、木偶の棒」


 二人が抜けた階段の先。

 第五階層から、壮絶な戦いの音が響き渡った。

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