第4話 初めてのフレンド

 アイテムを拾い、街に戻り一度ログアウトした私は、ここ数年見慣れた天井や壁を映し出す機械の画面を見ながら暗闇の中、ある人を待っていた。


 午後四時になると部屋の向こうに医者であり、科学者でもある新藤さんと一人の女性が部屋に入ってきた。


 新藤さんはVRゴーグルを使いMFDM医療型フルダイブマシンと接続し、MFDMの独自の世界にアバターで入り込み質問を始めた。


「唯華くん、MFDMの使い心地はどうかい?」


「使い心地は、フルダイブ型VRゴーグルと特に変わらずとても使いやすいですよ」


「バグとか使い難いところは?」


「いや、特にありませんでしたよ、とても使いやすくって久しぶりに体を動かせて楽しかったです」


 新藤さんは淡々と質問をし、私は質問淡々と返す作業を三十分程度繰り返し、質問タイムが終る。


「いやぁ、それなら頑張ってMFDMを開発したかいがあったもんだよ」


 そう、目の前にいる新藤と言う人はこの、医療型フルダイブマシンの製作者であって医者でもある超絶スーパーエリートなのだ。


 新藤さんはその後も、少し雑談をしていった後、仕事がまだ残っているようで仕事をしにいった。


 私はログアウトをする新藤さんに手を振り終えた後、暗く小さい独自の世界を後に逃げるように再びVRMMOにログインした。




 ――――街の宿――――


 私はベッドに横たわる体を起こし、両手を上に体を伸ばしながら凝り固まった筋肉をほぐしてから、鏡の前に移動する。


「ちらちらと見られてるとは思ってたけどまさか、こんなにも自分が可愛いなんて――」


 両手を自分の頬にに置き、頬を赤らめている。


「︙︙罪な女だなぁ」


 声は棒読みなんだが、何故か表情が赤っぽくなり、少し色っぽく聴こえるのは気のせいだと思いたい。


「さて、前回手に入れた素材を活かすためのアイテムでも買いに行こうかな」


 先程までの自分を忘れ、道具屋に出かけるための荷物をまとめ部屋を出てる、一階のカウンターにいる猫ちゃんをモフってから、外に出る。


「よし、道具屋に行くか!」


 道具屋に行こうと決め、歩き始めてから少しすると十字路に出て、商店街を通り、大きな道を横切る時、後ろの方から声がかかる。


「お〜い!君〜!」


 私ではないだろうと思い、先程の売店で買った林檎りんごを食べながら歩き続けるが、声がかけられるので後ろに振り向く。


「後ろには「やっと気づいてくれた」と言いながら駆け寄ってくる女性プレイヤーがいた。


「あっ、昼間のお姉さん、確か名前は︙︙」


 口のなかにあった林檎を飲み込んでから話かける。


「ノエルだよ、覚えてくれただけでも嬉しいよ」


 昼間とは違い綺麗な黒髪ロングのノエルと名乗る女性はニコニコしながら話を続ける。


「昼間はごめんね、ギルドでボス討伐予定があったから急いでてフレンド登録するの忘れちゃってたや、でも、たまたま歩いてたら君を見つけてね本当にーにっ偶然だね」


 ニコニコと話す彼女ことノエルのマシンガントークを林檎を食べながら私は聞き、流し、たまに相槌、稀に返事を返していると話がひと段落がついたのか話が切り替わる。


「ところで君の名前って聞いたかな?あと、もし良かったら私とフレンドにならない?」


「そういえばお昼の時は自己紹介してませんでしたね」


 少し前の記憶を辿りながら思い出し、軽く頭を下げながらいい、自己紹介を始める。


「私の名前は《ユイ》です、今日始めたばかりの初心者ですけどフレンドなんていいんですか?」


 「いーの、いーの」と言いながらノエルは名前の確認を終えた後、器用に両手を動かしウィンドウを操作し、画面をポチポチしている。


「よし、そっちにフレンド申請送ったけど届いてる?」


 確認をするために左手を動かしウィンドウを出し、フレンドの欄から申請が来ていることを確認し、ノエルに「ちゃんと来ている」という事を伝える。


「じゃあこれからは私達フレンドだね!できれば一緒に狩りとかしたいんだけど、このあと中級ダンジョンにいかないといけなくて︙︙」


 私はノエルに「私もこれから道具屋に行くから別に中級ダンジョン行ってもいいよ」と返し、別れの挨拶を告げる。


 ノエルは嬉しそうに笑い、街の外に行くのを見送ってから、私は道具屋に体を向けあるき始めるのだった。

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