6頁 一花の学校、葉名館学校へ
綺夜子は一花の学校である
開いている窓から自然と珀が玄関前で女子生徒たちに囲まれていたのが見える。
「あの、お兄さんのお名前ってなんですか!?」
「すっごくカッコいいですね、メールアドレス交換しませんか?」
「あ、あの何のお仕事をしていますか?」
黄色い声の女子生徒たちの声が自然と耳に入る。
「あの、お連れさんは大丈夫ですか?」
「あ、はい。大丈夫です」
綺夜子は記入できる分の書類を全て終わらせるのに務めた。
……ごめんなさい、珀。後もう少しなので。
よし。私は書類を職員の人に確認を取ってもらってから外に出る。
玄関を出れば、圧倒的にいろんな経路の女子生徒が珀に群がっていた。
「……悪いが連れが来たので失礼する」
「え!? ま、待ってください!!」
「せ、せめて連絡先の交換を!」
……珀、本当にごめんなさい。
ここは待ってくれていた探偵助手にお礼もするべきですね。
綺夜子は女子生徒たちの群れの中からかき分けて珀の腕を引っ張る。
「ごめんなさい、私たちは一花さんと用事があるので、これで失礼します」
「……失礼する」
珀は一瞬、驚いた顔をしたがすぐに無表情に戻った。
私は気にせず、珀を連れて教員玄関の方へと向った。
「……わぁ、綺麗」
一人の女子生徒がボソッと呟いたのを聞き逃さなかった。
「何よ、あんな年増ただのブスじゃん」
一人の女子生徒の言葉が耳に入る。
……まぁ、そうですね。好意を抱いた相手に女の影は、恋愛物作品好きならばお邪魔キャラレベルで不快なものです。
好意を抱いた異性に這い寄る女の影なんて、恋愛小説のライバルキャラに不快感を覚えることは恋愛作品好きにはあるあるの話ですし。
私も多少は嗜むから、すっごくわかる。年増だのブスだのは、嫌は嫌だが下手に気にするのも大人の自分がしていいとは思わない。
「……」
「っひ!! か、帰ろ!!」
「う、うん」
急に珀が立ち止まったのを感じて、私は振り返る。
彼は横目で私のことを罵倒してきた女子生徒を圧のある凄味で女子生徒を睨んでいた。
「? 珀?」
「……なんでもない、はやく教室に入ろう」
「……っ、はい」
おそらく、珀は怒ってくれたんだ。
そんな優しい彼に、少し、お礼は言うべきで。
「……ありがとうございます、珀」
「……なんだ? 急に」
「そういうことにしておいてあげます、素直に言うことも時には美点なんですよ」
「素直に言えば、お前は俺だけの番になってくれるのか?」
「ふざけているつもりなら、後で事務所で説教コースですよ」
「本気で言ってる」
「……、もうっ」
綺夜子は割り切って、学校の口内へと足を踏み出した。
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