5頁 情報収集 後編

 私はその後、一花さんの周りのことを調べた。

 虐められている原因が、どのような理由なのかも徹底的に。

 まず、知者ししゃである彼女が登校拒否とうこうきょひをしているのか。答えは明らかだ。

 彼女が神秘存在を見えるから友人たちの誰かと話したのがきっかけで周囲から気味悪きみわるがられたとなっている。

 ……まぁ、あり得ない話ではないだろう。


はくはどう思いますか?」

「……友人や同級生、先輩といった類の立場の人間だろう。家族は除外していいな」

「そうですよね……しかし気になるのはこれだけではありません」


 私は黒崎探偵事務所のオフィスで、執務机しつむづくえの上にある資料の紙を置いた。そこには、檻舘一花おりだていちかが別人のようだという内容が書いてある。

 いつもなら穏やかで引っ込み思案なのに蹴ったり殴ってくる、とか。

 仲良かったはずの友人に、陰口を言っているだとか。

 ……聞いただけでは、前回会った一花さんとは想像もできない行為だ。


「可能性の一つとしては、一花さんの姿で成りすましている人間がいます」

「……魔法や魔術と言った類か?」

「はい」


 本来なら洗脳や、記憶操作の類を想像したがその線は低い。

 普段の彼女らしくない、というのが重要なのだ。


「……もしそうなら、早く手を打たなくては一花さんが学校に復帰するのは難しくなってしまうかもしれません」

「そうだな」

「もし、変身ならば全部の責任は一花いちかさんに向くように仕向けられます。次第には今後、彼女に何が起こるか、なんとなく予想できます」


 肉体的、精神的な暴力は自然とされかねない。

 手早く対処しなくてはならない。一花さんが普通に学校に通えるようにしたい、というのが哲隆さんの個人的な頼みの一つでもあるのだから。

 

「誰なのかわかっているのか?」

「それを確認するためにも、調査しなくては……はくなら助手ですし、ボディガードの役割も果たしてくださるでしょう?」

「もちろんだ」

「なら、急いで情報を収集しましょう。一花さんが本当に学校に通えなくなる前に」

「ああ」


 はくは、疑問を頭に浮かべながらも素直に従うことにした。

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