第25話 コスプレショー

「うおぉぉぉ!!!」


 俺は腹の中から声を出すように叫んだ。

 今、目の前にはメイド服姿の瀬川がいる。


 ちゃんとブリムもついている奴を買ったのでそれもつけてもらっているが、本当に似合っている。


 黒と白の王道なメイド服、これこそ正義。

 そして、瀬川の清楚さともマッチしているため、そんじゃそこらのメイドさんとは比較したくないくらいだ。


 そしてなによりだ……。


「か、一真くん……そ、そんなにジロジロと見ないでくださいっ」

「どうしてだよ、これはご褒美だろー?」

「そ、それはそうですけど……」

「恥ずかしすぎますっ……」


 そう言いながら、顔を真っ赤にしている瀬川が一番可愛い。

 誰が何と言おうと、この瞬間は瀬川が一番可愛いと言える自信がある。


「しゃ、写真はダメですぅ!」

「だ、ダメでしょうか……ご褒美……」

「――――っ、わ、分かりました……一枚だけですよ」

「よっしゃー!!!」

「もう、本当にわかってるんですか?」


 まったくもう、という視線を送られるが、そんなの関係ない。

 俺は最高のシャッターチャンスを逃さないために、全神経を集中させる。


 その瞬間だった――――。


「へ、へくちゅん」


 瀬川がくしゃみをした。

 そしてせっかく落ち着いてきた、顔の赤さが、また段々と赤くなっていく。


「可愛いくしゃみだな」

「や、やめてくださいっ、くしゃみに可愛いなんてありまへんっ」

「今度は噛んだ」

「~~~~っ! もう! イジワルなんですから!」


 そう言うと、うっすらと瞳に涙を浮かべながら俺を見つめてくる。

 俺はここだ! と思い、シャッターを切る。


 本当に最高の一枚だ。

 名前を付けるなら、メイドの涙……安直か。


 天使の雫、女神の羞恥……こんなところか。


「もう、こんなところを撮るなんて」

「いい趣味してるだろ?」

「悪趣味ですよっ! まったく……」


 ぷすぷすと地味に怒っているようだった。

 俺はもうこれ以上は刺激しないようにした。


「そういえばサイズとか大丈夫だった?」

「サイズですか?」

「うん、俺が勝手に決めて買っちゃったから」


 何の相談もなしに俺が購入ボタンをポチったので、サイズが小さすぎたり、大きすぎたりしないか心配してた。


「いえ……特にはないんですが……」

「何かあるのか?」

「え、えっとー、そうですね、お胸の方がきついかなと」

「お胸が……ほほう」


 俺はその言葉で瀬川の胸へと視線を向ける。

 たしかに、普段制服では分からない、パツっと張っているように見える。


 健全な男子高校生にはそんなの刺激が強すぎる。


「一真くん、目線がえっちですよ」

「そ、そんなことは……」

「ふふふっ、冗談ですよ」


 危ない、思い切り瀬川の胸を見ていたのがバレたのかと思った。


「ご褒美もしてもらったし、今度は俺が瀬川にしてあげるよ」

「え、いいんですか?」

「いいのいいの」

「で、でも……」


 小さなことでも俺にできることなら何でもいいと伝えたら、少し考えさせてくれと頼まれた。


 そこで俺は嫌ダメだなんて言う、我慢のできない男じゃない。


 そうして俺の家でのメイド服のコスプレショーが幕を閉じた。

 メイド服はしっかりと返却してもらった。


 そのままあげるとは言ったのだが「い、いらないですっ」と断られてしまった。

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