第17話 ファミレスでみんなでご飯
俺たちは今、ファミレスでご飯を食べている。
学校帰りに寄り道、しかも男女2対2だ。
こんなにも青春という言葉が似合う場面が他にない。
「よーし、何頼もうかなー」
木崎が我先にとメニューを広げた。
それに続き俺と矢島もメニューに目を通す。
すると、恐る恐る瀬川が遠慮がちに手を上げる。
「どうした?」
「あ、あの……、私こういうところ来るの久しぶりで」
「初めてではないんだよね?」
「えぇ、そうなんですが……あまり注文の仕組みを理解していなくて」
すみませんと瀬川は頭をペコっと下げる。
それを聞いて木崎と矢島はびっくりしていた。
俺は自分であんなに美味い料理作れるなら来てなくても納得と思ってしまった。
「両親厳しいとか?」
「厳しいといいますか、自分で作ってたので……」
「おぉ~、まじか、瀬川さんはいいお嫁さんになりそうだな!」
「え、あぁ……ありがとうございますっ」
あれ? あんまり嬉しそうじゃない?
俺が前に料理を褒めただけで、恥ずかしそうにしてたのに。
ってか、ニカッじゃねぇんだよ。
木崎良平、単純に褒め上手なのか、人間たらしか。
「あの! メニュー頼まない?」
「おう! そうだな、サンキュ矢島!」
「う、うん……良平は仕方ないなぁ」
あー、瀬川が褒められても気まずそうにしてたのは矢島がいるからか。
なるほど……。
てか、矢島の木崎への態度、俺と全く違うんですけど。
「そ、それで注文の仕方は……」
「どれ食べたいんだ?」
「え、えっと……じゃあ、このハンバーグを」
「はいよ、俺の注文するついでに書いとくよ、他にはない?」
「な、ないですっ」
俺は瀬川の分の注文も一緒に取る。
その一連のやり取りを見ていたのか、木崎が俺と瀬川の方を見て一言。
「お前ら……なんだか」
「なんだよ」
「めっちゃ付き合ってるみたいだなっ! 中学生みたいなカップル」
「なわけないだろ、あんまり、からかうなよ」
「ハハッ! わりぃ!」
中学生のカップルって、結構酷くないか?
「瀬川、冗談だからなアイツのは」
「は、はい……」
「おいおい」
「わ、わかってましゅっ!」
「噛んだ」
「――――ッ~!」
顔を赤くしてウルっとした瞳で睨まれる。
その目つきにビクッと身体が反応する。
からかいすぎた? いや木崎のほうがしてたはずなのに。
「そんな、はっきりと否定しなくても」
「いや、でもなぁ」
「わかってますよーだ」
「お、おう……」
プイッとそっぽを向き、俺とは顔を合わせようとはしない。
それを見ていた矢島がやれやれといった感じで見てくる。
俺は矢島にムスッとした表情をすると、彼女はアァン? というガンを飛ばしてくるので、サッと目を逸らす。
怖すぎます。
あと一秒長く目を見ていたら確実にやられていた。
◆
「へぇ~? 瀬川ちゃん頭もいいんだ」
「そ、そんなことないと思いますけど……」
「謙遜するな、すごいことだからいいだろ」
「ありがとう……ございますっ」
そう言うと、落ち着かない様子だった。
「あ、じゃあよテスト勉強みんなでしようぜ!」
「そ、それいいっ! 私も勉強したいし!」
「矢島は他の理由が――――」
キッ! という殺気むんむんの目つきを送ってくる。
そして、笑顔で俺を見てくる、全く目は笑っていないが。
「なぁにぃ? アンタこそ必要なんじゃないの? バカなんだから」
「うるせーな、お前はどうなんだよ」
「ふんっ! 私はこれでも学年二桁順位です」
「なぬ」
「おお、頭いいなっ!」
ていうか、俺たちというか、瀬川の負担が大きすぎるだろとか思ってたら、彼女が口を開く。
「いいですよ、やりましょう」
「ほ、本当?」
「瀬川さん助かるよっ!」
「ただし条件があります」
条件? なんだろうと気になる。
別に勉強会に参加しようとは微塵も思わないが。
「一真くん、あなたは強制参加です」
「は? いやいやなんで」
「赤点が多いと矢島さんと木崎くんに聞きました」
「え、えっと……それは……その」
「私が教えるからには赤点なんて許しません」
まさかの甘々テスト勉強じゃないのか。
スパルタ教師かよ。
「がははっ! ドンマイ、一真」
「お前も言えないだろ」
「そうですよ、木崎くんもです」
そう言うと、瀬川の目には火がついているように見えた。
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