第7話 ダメ兄と優秀な弟
「今日は早いんだね、珍しい」
「そうだな、弟よ今日はなぜか珍しく早いんだ」
早く会話を終わらせたく、切り上げようとすると、なぜか弟の
「そちらの可愛い女の子は?」
「お前も噂くらい知ってるだろ、最近転校してきた子だよ」
「あ~僕のクラスでも話題になってるよ」
すると斗真は瀬川に近づき、軽い会釈をする。
そのあと、その憎たらしいほどのスマイルを見せつける。
なんとも胡散臭く感じるが、女性からみたらアレにきゅんと来るんだろう。
「古賀一真の弟の斗真です、よろしくね」
「はい、よろしくお願いいたします」
瀬川の反応は思ったの違い冷たい反応ですぐには人を懐の中へ入れないようなものだった。
それに斗真も感づいたのか、すぐに引き下がる。
「じゃあね、兄さん」
「あー、そうだな弟よ」
そう言っていつも通りの会話で終わらす。
「双子なんですね」
「わかるよな……やっぱり」
「お顔がとっても似ていましたので……ですが、あの人は少し怖いって感じてしまいます」
「斗真が?」
「はい」
そう言うと、瀬川は眉を下げて苦笑いしながら口を開く。
「良くないですね、初対面でしたのにこんなことを言っては……私は性格が悪いのかもしれません」
「初対面の相手に対して怖いって思うのは当然だろう、それにあいつのスマイルはどこか胡散臭い」
「ふふっ、それを言ったら怒りそうですけどね」
「いいや、怒ることはないさ」
アイツは怒ることはせずに笑う。
勝ち誇ったような笑みを浮かべるはずだ。
「ま、アイツはこの学校でも有名だし優秀だから」
「優秀ですか……」
「俺とは違ってな」
「またそんなこと言うんですから」
瀬川は困ったといった様子だったが実際そうなのだから仕方ない。
俺ももう慣れたものだ、双子で片方と比較されるということは、そして前よりも今の方が全然気分がいい。
慣れ……とは少し違うが。
「せっかく早く学校へ来たのに、朝からアイツと会って自分のダメさに気づかされるとは」
「一真くんはダメなんかじゃありませんよ」
「そりゃどうも」
「あ~、その感じだと信じてませんね?」
そう言いながら不服そうな態度をとってくる。
アイツと会って一番心に来るのは俺だ。
そのあと、教室に入ると「なんで瀬川さんがアイツととか」「なるみちゃんってそういうのがタイプ?」と言う声が聞こえてくる。
別に俺に関してはクラスメイトが言う事がすべて正しいのだが、瀬川が言われるのには我慢ならん。
俺も我ながら子供なのだ。
「あーあ、朝から美少女と登校できてよかったなー」
などと、適当なことを……いや、半分はそうではない。
しかし、煽るようなことを言ったのは確かだ。
教室の反感を買う。
その様子を見て慌てている瀬川がみんなに説明をする。
たまたま会っただけだと、それで事態は収拾する。
これで最初から登校したという噂などはなく、俺みたいな奴がタイプという事も広まったりはしないだろう。
「一真くん……今日、お話がありますから」
「え、お、おう?」
「家に行きますからね」
「はい?」
え? なんか怒ってらっしゃる?
瀬川が怒るようなことをしたのか? 俺は全く身に覚えがないというか、この短時間で何をやらかした?
今日は集中する気もない授業も、聞いてしまう一日になってしまった。
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