ゲーム制作は楽しそう、でもお邪魔キャラが出現した!
第6話 仕事って?
陽平と准からのメッセージによれば学祭は無事に終わったらしい。アフレコについてはいざという時のために声を録音していたので、その後の放映は『声優の体調不良』と伝えて、録音したものを流させてもらった。
それでも観客はとても満足してくれたらしく、声優に関しての質問が、上映が終わった後もひっきりなしに続いたという。
「ホントーに、悪かった!」
登校してまず、自分がしたのは二人への謝罪。大事な時、しかも高校最後の学祭なのに本当に悪いことをした。
勢いよく何度も頭を上げ下げしていると友人二人は顔を見合わせ、おかしそうに笑った。
「なぁに言ってんだ。別にイベントをぶち壊したとかじゃねぇんだから。な、准――っくくく」
「まぁな……イベント的には色々あったけど大成功なんじゃないか――クスッ」
……なんだ、この意味深な笑いっ。何がそんなにおかしいんだ。
不気味な状況に眉間にシワを寄せていると。二人はついに吹き出して大笑いし、その理由を教えてくれた。
つまりはあの後、夢くんが気絶した自分を抱えて現れたらしいが、その姿がお姫様を横抱きに抱える王子様さながらの姿で驚いたこと。
その人物こそが自分が想いを寄せる“夢くん”だと知り、そのイケメンさを見て納得したこと。
さらに自分は夢くんの仕事を手伝うことになり、夢くんの家に居候することになったのを知らせていたので。そういう色々な面を考えて二人で『良かった良かっためでたしめでたし』と喜んでいたら、おかしくなってしまったそうだ。
「なんだよ、それ。超絶意味不明……」
というか夢くん、お姫様抱っこでみんなの前に現れたのか、マジか。それなのに自分、こんな堂々と登校して恥ずかしすぎるわ。どうりで廊下歩いていたら、クスクス笑われたわけだ。
放心していると陽平が笑いながら肩を組んできた。
「まぁまぁ、そう言うな! これでもオレと准はお前の恋路がうまく進んでることを喜んでるんだぞ」
「ずっと会えていなかったんだろ。それがいきなり同棲になったんだ。願ったりかなったりじゃないか」
「ど、同棲とか言うなー!」
そんな甘いものじゃない。仕事を手伝うだけで別に恋人になって一緒にいるわけじゃないのだ。今朝だって朝早くから仕事の打ち合わせとかで人が来ていたし……。
一人は先日も学祭に夢くんと一緒に来ていた体格の良くて明るい男性、aBc学園のOBでもある
もう一人は黒髪にグラサンをかけた三十後半ぐらいの男性で
ちなみに夢くんはゲームプランナーという企画を立てる役職だとか。
(そんなだから朝から二人きりってわけじゃなかったし。昨日も夢くんは夕食の後は自室にこもってたから、ずっと一緒でもなかったし……)
でも同じ家の中、壁を隔てた向こう側に夢くんがいると思うと顔がニヤけそうになった。これからしばらく、ご飯も一緒に食べれるのだ……それだけでも十分過ぎる。このまま留年してもいいくらいだ。
「そんで、大好きな夢くんの仕事って何を手伝うんだ?」
陽平は未だに肩を組んでいた。状況を心底楽しむように笑っている。
「もちろん、日々希の声を活かしたことを手伝ってもらうんだろうな。しかし偶然にもお前のアフレコを見てるなんてな……名前については何もツッコまれなかったのか?」
准の冷静な考察を聞き、顔が熱くなった。それについては……聞かれたことは大問題なのだが夢くんは全く気にしていなかったのだ。
それを伝えると准はあきれたようにメガネの下の目を細めた。
「……その人、ニブいのか? お前の恋路、こっから前途多難な気がする、絶対」
「な、なんでそんなこと言うんだよ!」
「確かになぁ〜、でもトラブルを乗り越えてこその愛だぜ、日々希! 頑張れよ〜!」
「う、うるさいー!」
いつもと違う道を通り、帰路につく。
道中、帰ればあの人がいるかも、と思うと早く帰りたくて足が自然と速歩きになり、そんな軽い運動のせいか脈拍も上がってドキドキした。
(帰ったら夢くんがいる……)
いや、わからない。仕事でいないかも。でも合鍵は渡されたからいなくても入ることはできる。
(あ、合鍵って……)
夢くんの住むマンションは本当にaBc学園から歩いて十分ほどで。住宅街の中にある普通のマンションだ。オートロックのエントランスを合鍵を使って開け、エレベーターで最高層の九階へ。
そして玄関前まで来て、合鍵を見つめながら自分は固まっている。
(こういうのは、恋人だからもらったりするもん……でもないよな。うん、そうだ、家族だって持つしな……)
なぜか自分が思い上がらないように自分で説得した。うん、そこまで自惚れるな。
震える手に力を入れ、鍵を使って開けると。中は静かだったが、かすかに話し声がする。
(……夢くん、まだ仕事かな?)
そっと室内に入り、朝足早に通り過ぎてしまったリビングをのぞく。
「夢彦さん……」
「由真……」
リビングの大きめなソファーには仰向けに寝そべる由真さんと。
その上にかぶさる夢くんの姿があった。
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