第4-16話 闇の精霊の日本『観光』プラン?
長年ダークエルフを庇護し力を失いつつある闇の精霊を
焔霊剣皇イルフェノの姿で会いに行くとダークエルフ達は精霊に対する一定の敬意を払ってくれたが、闇の精霊を何処かへ連れて行かれてしまうのは不安があるようだった。
まずはダークエルフ達からの信頼を得ないといけないと感じた炎は121層の『浄化』を開始した。
121層を徘徊している【魔族】たちを花魁サキュバス・アイウェールに【魅了】してもらい、戦闘意欲を喪失させ――。
「――我が光よ。魔を祓い、浄化しろ。――【皎皎雪光】」
全身白の美青年が【魔族】たちを
「炎さーん。浄化ばっかりじゃなくて俺にも戦闘させてよ。こっちは北海道から来てるんだからさー」
北海道を拠点とする国内8大クラン【祓魔皎雪】のクランマスター・
アイウェールが魅了した大量の【魔族】の浄化処理は日本最高峰の白魔導士である彼にしか出来ないので正式な依頼として
【魔族】たちがニート化されていく様を見て、ジャルナをはじめとするダークエルフ達は目を白黒させている。
「ダークエルフも白く出来たりして……」
白童・征英は無邪気な笑みを浮かべながらダークエルフ達を一瞥する。
『――その者達になにかしたら闇の精霊が黙ってないわよ?』
焔霊剣皇イルフェノがそんな征英に釘を刺す。
「じょ、冗談ですって。怒らないでッ!炎の精霊サマッ!てかやべぇ。精霊サマに話しかけられた。他のクランマスター達に今度自慢しよ」
征英にとってイルフェノからの忠告はご褒美だったようだ。
「それで弱ってる闇の精霊を地上に連れ出して力を取り戻させるって。なんなら北海道はどうすか?北の大地の夜は空気も澄みきってて星も綺麗ですよー」
征英は郷土愛から北海道の夜を推薦した。
「知床峠に十勝岳連峰でしょー。でもやっぱり俺の一推しは【満天の星の丘】っすかね」
「うーん。行ってみたいけど北海道は遠すぎるかなぁ……」
炎の仮面冒険者は北海道の星空に興味を持ちつつも征英の提案を却下した。
「じゃあ炎さんは何処へ連れて行くつもりなんすか?」
「おばけ屋敷?」
「や、闇の精霊っておばけ屋敷で力を取り戻せるんですか?」
「精霊って根は良いけど悪戯好きだからね。人を驚かすのは気分転換にはなると思うよ」
「闇の精霊のお化け屋敷……」
「
「着ぐるみダークエルフ……」
闇の精霊とダークエルフのお忍び日本観光の全容が明らかになるにつれ、征英は言葉を失う。
「本格的に力を取り戻すための場所はブラック企業がたくさんあるオフィス街かなぁ」
「日本の闇を見せに行ってる……」
「まあ光を観せる訳にはいかないからね。闇の精霊だけに。なんだったら俺が働いてた会社の上空に連れて行こうかな?……」
「炎さんの社畜トラウマがフラッシュバックしてるッ!!」
「まあ今の冗談で」
「どこからか冗談なのかわかんねぇ……」
「近場で闇の精霊を癒せる宵闇を探すよ」
闇の精霊の日本観光話はここで終わる。
「それじゃあ【魔族】の浄化も一段落して、これから122層への階段を塞いでるっていう【瘴気魔獣】とのボス戦ですか?」
無人階層探索ドローンによる調査でどうやら122層への階段がある洞窟を塞ぐように巨大な魔物が存在している事が判明した。
どうやら120層から逃走した【魔族】たちが121層に存在する魔物や樹を利用して創り上げた【瘴気魔獣】のようだ。
この階層の森を紫に染め上げている元凶。
その【瘴気魔獣】を討伐すればこの階層を蝕む瘴気も晴れるのではないかと思われた。
「わざわざ北海道から来たんで、その【瘴気魔獣】、俺に戦わせて下さい」
国内8大クランのマスター・
原宿(東京)ダンジョン121層終着点――。
「でかッ!!」
122層への階段がある洞窟の前に聳え立っているのは巨大な花壺を抱えた紫樹の巨人。
紫の花壺の中には瘴気の泥――瘴泥が蓄えられ、近づく者には巨人の背から無数に伸びた、先端が蕾の蔓が吸い上げた瘴泥を飛ばし、対象を腐敗させる。
瘴泥を避けても無数の蔓が敵対者の自由を奪おうと襲い掛かる。
「これが【瘴気魔獣】……」
征英は【魔族】によって強化された魔物との初戦闘に息を呑む。
「大丈夫?今日は既に【魔族】の浄化で消耗してるでしょ?」
炎の仮面冒険者は征英の魔力消費の心配をしていた。
「ダンジョン内で戦闘するのに魔力全快の方がレアだし、既に半分以上魔力消費してようが俺が勝ちます!!」
征英は紫樹の巨人に接近した。
「こんな魔物、結局は魔樹だろ!?コレでぶった斬るッ!!!【皎刃の
征英は白く輝く巨大なチェンソーと顕現させた。
チェンソーで紫樹の巨人を切断しにかかる。
白の魔力が花壺を裂き、瘴気の泥を浄化していくものの、時間がかかってしまっている。
無数の蔓が征英に襲い掛かる。
『――その遅さは致命傷よ。【焔刃溶斬】』
イルフェノが振り下ろした真紅の巨刃は轟音と共に、紫樹の巨人の瘴泥の花壺、無数の蔓、そして本体全てを灰燼にした。
「はは、樹ってホントよく燃えらぁ」
征英はまだまだ届かない境地を知った。
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