第4-13話 ダークエルフとの遭遇
ダンジョン121層の紫の森で炎の仮面冒険者が遭遇したのはダークエルフの集団だった。
花魁サキュバス・アイウェールの【魅了】によりダークエルフと戦闘していた【魔族】たちは戦意喪失し、場は休戦状態となった。
撮影ドローンも戦闘終了を確認後、この場に接近し始めた事でダンジョン配信チャンネルの視聴者もダークエルフの姿を目撃する事となる。
:うおおおおお。今度はダークエルフだぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!
:女性のダークエルフもいるぞぉぉぉぉぉ!!!
:褐色イケメンダークエルフ……しゅき!!
:ああ……私にはゼラン様という推しがいるのに……オラオラ系ダークエルフに迫られたらどうしたら?
各々の性的嗜好に刺さったのかコメント欄はまたもや爆速となる。
「うーん……」
コメント欄とは対照的に炎の仮面冒険者の反応は薄い。
:【防衛省の麗水(よす)ちゃん】炎さん。どうしたんですか?
「エルフとダークエルフって仲良く出来ると思う?」
炎の仮面冒険者はエルフ族のゼランとこの場にいるダークエルフの集団をエンカウントさせても大丈夫なのか心配していた。
今この瞬間も銀色の髪、褐色の肌、アメジストのような紫色の瞳に尖った耳のダークエルフ集団は炎の仮面冒険者とサキュバス・アイウェールへの警戒を解いていない。
むしろ激しい敵意すら伝わってくる状況だった。
【魔族】との戦闘で消耗していなければ襲い掛かってきたであろう。
一朝一夕でどうにかなる相手ではなさそうというのが炎の仮面冒険者の第一印象だった。
『イルフェノ』
『――何?』
『ダークエルフにも俺の意思を伝えられそう?敵対意思は無いって』
『――今の状況で素直に受け取ってもらえるかわからないけど思念を飛ばしてみるわ』
炎の大精霊であるイルフェノからの思念に戸惑うダークエルフ達。
新たな敵の登場で戦闘が泥沼化する事はないと理解し、安堵する者はいた。
だからといってすぐさま友好関係を築ける訳ではない。
彼らからは自分達が置かれている
その苛立ちの起源がエルフ族に対するモノだったら?
:エルフとダークエルフってやっぱ仲悪いのか?
:どうなんだ?
:俺らに聞かれても
:当事者双方から話を聞くしかないのでは?
:【防衛省の麗水(よす)ちゃん】視聴者さんからはエルフとダークエルフ双方から話を聞くべきでは?とのことです。
「実はエルフの郷を追放された過去から確執が存在していて愛憎劇・復讐劇が始まったらどうしよう?」
彼らから向けられる視線の鋭さに嫌な展開を想像してしまう炎の仮面冒険者。
:妄想逞しいな
:復讐劇は考え過ぎじゃね?
:もっと気楽に考えてもいいのでは?
:【防衛省の麗水(よす)ちゃん】視聴者の皆さんはもっと気楽に接してもいいんじゃないか?とのことです。
「じゃあ『検証!エルフとダークエルフは仲良く二人三脚出来るのか?動画』とか企画してみます?」
:エルフとダークエルフで二人三脚w
:お気楽過ぎて草
:よくそんな発想出てくるな
:これは配信中毒・動画上級者ですわ
:二人三脚のはずがガチ決闘に発展しそう
:炎にエルフとダークエルフの行く末を託したらアカン
:【防衛省の麗水(よす)ちゃん】視聴者さんたちはやっぱり慎重に対応するべきだと仰ってます。
「まあそうだよね。じゃあもう撤退で」
炎の仮面冒険者はその場を離れる事にした。
:えらいあっさり引き下がるな
:面倒事の匂いしか感じなかったんだろうな
:ダークエルフ回、もう終了なん?
「ダークエルフの人達がなにか困ってるなら手を貸すかもしれないですけど、そうじゃないなら基本ノータッチで。エルフの郷に急がないといけないんで」
:病気の綾覇ちゃんの為のエリクサー探しがダンジョン攻略の目的だもんな
:困ってるなら手を差し伸べるのはホント炎ってカンジ
:これが精霊に好かれる性根なんだろうな
「これから121層に来るたび、ダークエルフの人達にも日本食の差し入れでもしてみようかな?」
:日本食の差し入れか
:いいね
:何を食べさせるの?
「エルフのゼランはうどんを気に入ったからダークエルフは
:ダークエルフには蕎麦攻めww
:確執の心配してる癖になんでエルフとダークエルフをうどんそば論争に巻き込もうとしてるんだコイツは
:うどんとそば積年の論争にエルフ&ダークエルフが参戦!!
:【防衛省の麗水(よす)ちゃん】炎さん、エルフのゼランさんに香川県から案件の依頼が届いてるみたいです。
:案件来るの早ッ!!
:イケメンエルフさん、配信参戦してからまだ2時間も経ってないぞ
:自治体も見てるのかこのチャンネル
:炎のCM出演の多さを考えれば企業・自治体もチェックしてるのは明白
:でも最近は炎の新CM見ないね
:彼女の事でもうCMどころじゃないんだろ
「案件ねぇ。とりあえずゼランが待機してる場所まで戻って、まずはゼランからダークエルフについて聞いてみよう」
炎はサキュバスのアイウェールに帰還の意思を伝える。
魅了された【魔族】たちもアイウェールからの帰還の指示に従う。
その場から飛び立った炎やアイウェール――。
:おお。【魔族】たちが本当に従ってる
:炎の猫にサキュバスに【魔族】の集団ってもはや魔王軍にしか見えん
:確かに
:【魔族】たちの表情がだらけきったままなんだが
『――ねえ』
『どうした?』
『――ダークエルフの娘がひとり。私達を追いかけてきてるわ』
『え?』
イルフェノからの指摘に炎の仮面冒険者が振り返ると確かに銀髪に褐色肌に一目で女性だと分かるスタイルのダークエルフが紫の森の樹々を飛び移りながら必死に追いつこうとしていた。
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