第4-3話 火精霊の都
原宿ダンジョン66層から69層――。
【炎麗黒猫】のクランマスターである炎の仮面冒険者だけが入る事が出来る特殊空間。
今その場に炎の仮面冒険者を始め、炎麗黒猫の幹部といえるSランク冒険者たちや防衛大臣――仲弥厳をはじめとする防衛省関係者も精霊の聖域に足を踏み入れた。
「此処は……」
足を踏み入れた者達は感嘆の声をあげる。
ダンジョンコアが破壊された原宿ダンジョンはどの階層も基本灰色の空間が拡がり続けるだけだったのだが、この階層は明確に違った。
この空間に拡がるのは【紅の自然】――。
紅い草原、紅い花畑、紅い小川、紅い森。
火精霊の
そして先にはあるのはなんと紅い城塞都市。
近づいて見てみればその紅の城塞都市の外壁もゆらりゆらりと燃えている。
「じゃああの
炎の仮面冒険者は皆を火精霊の都へ招き入れた。
「これは……」
初めて火の精霊の
何故なら古代都市の趣きの中に炎のビルといった現代日本を彷彿させる要素が組み込まれていたから。
炎の石畳の上を炎の自動車が走っている。
「炎の車?」
一行の誰かがつぶやく。
それに対し、炎の仮面冒険者が答える。
「正確には『車の物真似をしている
「モノマネですか?」
「この世界に来た
『――だからそれは貴方がワタシにそうさせたからじゃない!』
突然発せられた炎の女帝の声に一同驚く。
「まあそんなわけで火精霊の
炎の仮面冒険者の言葉と同時に紅い花火が打ち上がる。
「あ。アレも火精霊のコたちが皆くっついて空へ飛び上がって方々に散るっていう花火の物真似です」
歓迎の仕込みをしていた事をネタバラシする炎の仮面冒険者。
紅い花火により一同が上空を見上げるとその存在が嫌でも目に入った。
「紅い城の隣に……タワーマンションッ!?」
紅き城の荘厳な雰囲気をぶっ壊している、誰もがツッコまずにはいられない光景だった。
焔霊剣皇イルフェノの為に築かれた紅い城の隣には建築中のタワーマンションが聳え立っていた。
「アレはイルフェノが私専用のタワマンも欲しいって火精霊の子たちにお願いして建ててもらってるんだって。女帝って凄いね」
『――貴方だって恋人と隠れて会う為の愛の巣にする気満々だったじゃない?』
「おい。お前!皆の前でそれ言ったら密会出来ないだろ」
『――クランの拠点にそんな空間創るなんてマスターとしてどうかと思うわよ?』
イルフェノの反撃に慌てる炎の仮面冒険者。
「と、とにかくあの炎の城にいる
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
紅き城、城内――。
焔霊皇帝の間へ繋がる中央通路とは異なる廊下を一同は進んでいた。
「此処は鍛冶や
その空間の光景を目撃した一同はハッと息を吞む。
火精霊たちが空中で鍛冶をしていた。
金属を自分達の炎で溶かし、鎚を打ち、溶かした金属を武器の形に整えていた。
歯車だったりも自分達の炎で創り上げていて、それらを組み上げ、
鍛冶や絡繰に夢中だった火精霊たちがイルフェノの存在に気づき、近寄ってくる。
火精霊たちは皇帝の前で跪くような仕草は取らず、ただただ嬉しそうにふわふわ漂っていた。
『――来たわよ。ガンドラ』
イルフェノの言葉に呼応するようにこの空間の奥に存在していた【炉】と思わしき巨大な炎塊がこちらへと近づいてくる。
【炉】の移動に仮面冒険者一行も驚きを隠せない。
『――これは焔皇陛下。
『――この
焔霊剣皇イルフェノは視線をAIな彼女に向ける。
指名された海咲ちゃんは【炉】な炎塊に向かって自己紹介をする。
『――は、初めまして。ワタシは戦闘用3D-AI海咲ちゃんです』
『――貴様。人間ではないのか?
『――は、はい。
『――ほう』
興味深げに彼女を観察する
『――ガンドラ。貴方はPCを始めとする配信機材――
ダンジョン時代の現代日本で配信中毒者に寄り添い続けた
『――焔皇陛下がそう仰るなら』
主の命に従うようだ。
『――魔術・錬金術を用いた
『――ハイ。ワタシを創った開発者は間違いなく天才です』
『――貴様の動力源は
『――ハイ。魔石を動力源にして動作を可能にしています』
『――確かにそれなら吾輩の力を馴染ませる事が出来そうだ』
【炉】だった炎塊が徐々に圧縮され、高密度の魔炎と化す。
『――では。失礼する』
『――え?』
『――成程。此処が動力源か』
ガンドラの言葉が彼女の
すると次の瞬間――。AIな彼女の瞳が紅く輝く。
『――想定以上の火属性
彼女の身体から漲る火属性の魔力に様子を見守っていたSランク冒険者や防衛省関係者も皆驚いた。
「明らかに『格』が上がってるわ。今なら私以上の戦闘能力かも」
女性ソロ冒険者の最強格【花龍の姫】――雅乃鈴はガンドラと同化した彼女をそう評した。
「とまあ。こんな感じで
炎の仮面冒険者は他のクランメンバーも
「威理ちゃん」
「は、はい!!??」
何故今日この場に呼ばれたのか分からなかった【斬歌】の少女は自分が指名されて驚きを隠せない。
「次は君ね」
こうして自身の想いを繋いでくれる後継を遺すかのように炎の仮面冒険者は皆を連れて紅き城を巡った。
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