第3-18話 オーディションします
原宿ダンジョン106層――。
既に原宿ダンジョン101層から105層までのマッピング&【魔族】の締め出しを完了した炎の仮面冒険者と戦闘用3D-AI【海咲ちゃん】。
「階層毎に
『炎さんに遭遇すると本当に【魔族】が逃げていくんですね。でもいいんですか?逃がしてしまって』
「まあ配信冒険者から撮影ドローンやらタブレット、配信機材を奪って、もう用済みだと命を奪う事も出来ただろうけど向こうはそれをしなかったし、こっちも余計な禍根を遺さない方がいいかなって」
『そうですか』
「考えたんだけど【逆侵攻】って言葉は物騒すぎるよ。戦争を想起させる言葉だし。配信的に
『【魔族】による地上への脅威が迫っている状況でも配信映えを気にするのですか?』
「ダンジョンが地球に誕生するなんて事態が起きた時点でこの数十年間ずっと非常事態なもんだし。皆が何か楽しめる
『娯楽……』
「そうだよー!!【海咲ちゃん】!人間は息抜きできないとすぐに
仮面冒険者とAIな彼女のマッピングに帯同してる撮影ドローンから麗水ちゃんの声が発せられる。
『あの人、なんであんな元気なんですか?』
「なんでだろうね?」
生みの親である天才開発者を
そんな思いやりのあるAIを創れたボク、やっぱり天才!!と――。
逆にAIな彼女は不思議で仕方がなかった。勿論彼女の真意をペラペラとしゃべってしまった事は秘密だ。
「106層のここら辺は初めて来たかも」
原宿106層は川や湖が多い湿原エリアだった。
現れる魔物もカエル系や
「炎さん!あれ見てください!!」
望遠機能もある撮影ドローン越しに何かを視界に捉えたのか麗水ちゃんが大きな声を出す。
「何々?俺には全然見えないけど」
『アレは……人魚?いや【魔族】?』
【海咲ちゃん】も自身に搭載されている望遠機能を駆使し、何かを捉えたようだ。
「【魔族の人魚?】」
普通の人魚族との遭遇だったらゲリラ配信すら始めてしまいそうな幸運な出来事だったのが、【魔族の人魚】ともなると状況が変わってしまう。
安易に距離を詰める訳にもいかないので、警戒しつつじわじわと接近していく。
湖のほとりで休息をとっていた全身が紫色の人魚が炎の仮面冒険者の存在に気づく。
しかし苦し気に怯えている様子を見せるだけで、今までの【魔族】のように翼を広げ、一目散に逃げていく訳ではなかった。
(翼がないにしろ泳いで逃げたりしないのか?)
思案していると何者かが凄い勢いで湖中から魔族の人魚へと近づいて来た。
水飛沫とともに姿を現したのは普通の人魚だった。
その人魚は【魔族の人魚】を守るように炎の仮面冒険者の前に現れた。
「――――ッ!!」
決死の覚悟で何かを叫んでいる。
(人魚が【魔族の人魚】を庇っている?これじゃまるで……)
『――その2人は姉妹みたいね』
焔霊剣皇イルフェノはその2人の人魚は姉妹である事を炎に告げた。
「普通の人魚と【魔族の人魚】が姉妹?」
『これはいったいどういう事なんでしょうか?』
「こんな事あるんだ」
3人は困惑しつつも状況を理解しようとする。
『――どうやらその姉の人魚は【魔族】から呪いを受けてしまったようね』
瘴気の呪いに汚染されてしまったんだろうとイルフェノは説明した。
「呪いを浄化出来ればこの人魚のお姉さんは元通りになるのか?」
『――多分ね。浄化といえば水や光の精霊ね。でも今回は人間の手で解決した方がいいのかもね』
「どうして?」
『――この際【魔族】の呪いに対抗できる浄化魔法を操れる人間がどれだけいるのか把握した方がいいんじゃないかしら?』
「成程」
炎の仮面冒険者はあるアイデアを思いつく。
「出来るならこの人魚のお姉さんの【魔族化】の呪いを解いてあげたい」
「じゃあそういう浄化・解呪に長けた白魔導士・聖女職の冒険者さんを防衛省の方で手配しましょうか?」
「いや。それじゃ面白くない」
麗水ちゃんの提案を炎は却下した。
「はい?」
『面白いかどうかで判断する場面ですか?』
また配信中毒が発症したのかと困惑する2人。
「公式アカウント【@炎麗黒猫の代表の猫】で募集しようと思う。【魔族】の呪いを浄化できる聖女・白魔導士を!!」
炎の仮面冒険者は【聖女オーディション】を開催する事にした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
@炎麗黒猫の代表の猫
【魔族】の呪いにかけられてしまった人魚ちゃんを私なら浄化・解呪し元に戻せると自信のある聖女様・白魔導士様、全国各地から募集させていただきます。
突然出てきた【人魚】というワードにまたもSNSは大騒ぎとなる。
≪猫耳族の次は人魚かーい!!≫
≪新階層ってまるで異世界みたい≫
≪白魔導士といったら8大クランマスターのあの御方も参戦くるー?≫
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