第3-12話 岡山県のフルーツダンジョン
炎の仮面冒険者は今、岡山県にいた。
クラン【炎麗黒猫】に持ち込まれた依頼を解決する為に。
今回の県外遠征に帯同している麗水ちゃんが突発ゲリラ配信を開始した。
:え?急に配信が始まる事あんの?
:なんか風景が東京ってカンジがしないんだが
:これもしかして俺の地元?
:地元ってどこだよ?
:岡山
「皆さん、こんにちは。俺は今、岡山県に存在する
炎の仮面冒険者が軽く会釈と挨拶をする。猫耳獣人姿で。
:岡山のフルーツダンジョンかよ
:有名な【ご当地ダンジョン】じゃん
ダンジョンが世界中に誕生して既に33年が経過した。
十数年ほど経過した頃だろうか、各都道府県において一部のダンジョンが変質化したのだ。
その土地その土地の特性をダンジョンも学習したのか、【ご当地ダンジョン】として生まれ変わったとダンジョン有識者は語る。
果物の産地として有名だった岡山県では【
しかし最近このフルーツダンジョンで異変が起きているという。
:そういえば食中毒騒ぎがあったってニュースでやってたな
:今まで葡萄の魔物や桃の魔物を食べれてた方が異常だったんじゃないの?
:でも下の階層に行くほど美味らしいぞ
:とにかく原因不明の食中毒騒ぎが起きて困ってるらしいね
:地元の冒険者ギルドやクランじゃお手上げで依頼が【炎麗黒猫】に来たのか
今回の配信では炎の仮面冒険者もコメント欄をチェックする事が出来るタブレットドローンも用意された。
「今回はダンジョンの異変の原因を探りつつ、まったりと果物狩りをしていきたいと思います」
:言葉通りの果物狩り
:ダンジョンでまったりとか言えるの本当にアンタだけ
「野郎だけで果物狩りするのも味気ないんで本日は女性ゲストを呼びました。【炎麗黒猫】に所属しているSランク冒険者、雅乃鈴さんです」
緊張した面持ちで配信画面に登場したのは日本の女性ソロ冒険者の最強格と名高い美貌の女性だった。
「【炎麗黒猫・
一見Sランク冒険者に相応しい凛とした佇まいだが、彼女の胸の内は既にリオのカーニバル状態だった。
:おお。【孤姫】だ
:【孤姫】が配信デビューするなんて
:【孤姫】すげぇ美人
:こんな美女がSランカーなの?
:東京レベルたけ……
「ん?【孤姫】?」
炎の仮面冒険者はコメント欄にずらりと並ぶ言葉に首を傾げる。
(あ。終わった)
彼女の脳内カーニバルは急遽開催中止が発表された。
「【孤姫】って雅乃さんの事?孤高で有名な女性ソロ冒険者だったから?じゃあその異名、今日で終わりですね。今の雅乃さんには【炎麗黒猫】の仲間達がいますから」
「マスター……(貴方達、聞いた?わたしはもうぼっちじゃないのよ!!)」
炎の仮面冒険者の言葉によって彼女の心の夜空に数千、数万の
:画面の中の美女が完全にときめいておられるのだが
:いやドヤってないか?
:そこの女たらし、既に彼女持ちで将来父親になるんじゃないんかい?
:無自覚だからしゃあない
:【孤姫】呼び終了ならこれからなんて呼べばいいの?
:【防衛省の麗水(よす)ちゃん】雅乃さんの新呼称はどうしましょう?
「冒険者の異名って自然と周囲からその人物に相応しい言葉が選ばれる気がするので皆さんも何か良い呼称があればコメントしてください」
「私はマスターの言葉に従うだけです(出来たらマスターに名前を付けてもらいたいのにぃ)」
「雅乃さんの新しい異名はちゃんと雅乃さんも気に入る呼称にしてくださいね」
「ご配慮くださり感謝します(貴方達、今まで私に配慮してた?
「それじゃあダンジョン探索始めます」
炎の仮面冒険者と鈴はフルーツダンジョンの中へと入った。
「本当に果樹園みたいなダンジョンですね」
基本他のダンジョンと変わらない岩壁で構成されたダンジョンなのだが、天井は果物の蔓で埋め尽くされていた。
:現地の冒険者が言うにはとにかく頭上警戒が辛いとかなんとか
:蔓が襲い掛かってくる時もあるらしい
:【防衛省の麗水(よす)ちゃん】御二人とも頭上警戒を
「じゃあとりあえず天井の蔓、全部燃やしますね」
炎の仮面冒険者の右手から放たれた炎がフルーツダンジョン1階層の天井の蔓を全て燃やし尽くす。
時折魔物の叫びが聞こえる。蔓の中で擬態していた果獣なのだろう。
:出ました。困ったら全部燃やしとけパターン
:焼き払え!焼き払うのじゃ!
:果物まで燃やしちゃってない?
:まあ今は食中毒騒ぎの最中だし
「そういえば県外のダンジョンってあの大氾濫ダンジョンを除けば、初めてなんだよね。どう進めばいいの?」
:【防衛省の麗水(よす)ちゃん】岡山フルーツダンジョンの立体地図情報を取り寄せてますのでマッピングドローンを起動しますね
彼女がそう告げると2人の前に一台のドローンが登場し、
次階層への最短ルートを地図ドローンが提示してくれている。
日本初の100層踏破者とSランク冒険者の2人の脅威になる様な存在はおらず、地図ドローンの示すままにサクサクと50層まで進んでしまった。
「50層のフロアボスって何?」
:地元有識者カモン
:たしか『スイトン』って妖怪だった気がする
:ご当地ダンジョンだとフロアボスも日本馴染みの妖怪とかになるのかよ
:【防衛省の麗水(よす)ちゃん】
――妖怪【スイトン】について。
岡山県
心を読む力を持つといわれ、その分意味不明な行動が弱点でもある。
蒜山高原のシンボルとして『スイトン』をモチーフにしたトーテムポールが所々に置かれている。
:岡山の伝承にそんな妖怪いるんだ
:弱点が【意味不明な行動】なの草
:【意味不明な攻撃】とか炎の仮面冒険者の一番の得意技なんだよなぁ
((心が読めるッ!?))
麗水海咲からの説明を聞いた2人は戦慄した。
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