推しのダンジョン配信者を死なせたくないので炎の仮面冒険者始めました～日本初の100層踏破者は毎回コメント欄がツッコミの嵐

第3‐6話 猫耳娘・ニウ

日本中が注目している池袋ダンジョン攻略配信中に炎の仮面冒険者が訪れた猫耳の獣人たちが暮らしている村――。

全身灰銀の毛並みの猫耳娘がその身に纏っているのはどう見ても黒が主体のメイド服だった。

「ホノオ！！」

炎の猫耳獣人姿の仮面冒険者にメイド服猫耳娘が笑顔で駆け寄ってくる。

「えーと。この娘（こ）は『ニウ』って名前らしいです」

配信ドローンに向かって彼女を紹介する仮面冒険者。

：ニウちゃんかわええええええええ

：猫耳メイド娘とか眼福すぎる

：ケモナー大興奮！！！

：なんでメイド服着てるの？

：【防衛省の麗水（よす）ちゃん】炎さんってメイド喫茶とか好きなんですかー？(ジト目

「基本配信ばっか見てるからメイド喫茶は行った事ないけどね。メイド姿のニウ、めっちゃ可愛くない？」

：愚問だな

：きゃわたんすぎるわ

：こんな可愛い生物が存在するとは……ありがとうダンジョン時代ッ！！

「じゃあ配信をご覧の皆さんにサービスタイム。ニウ。このドローンに向かってアレを言ってくれ」

「ドロン？」

初めて聞く言葉に首を傾げるニウ。

そんな仕草ひとつとってもコメント欄は大盛り上がりだ。

：尊すぎて死にそう

：てぇてぇ……てぇてぇよ……

：俺、明日から冒険者目指すッ！！！そしてニウちゃんと結婚するんだッ！

：死ぬなよ？

炎の仮面冒険者は指で『3』をつくり、ニウへ向ける。

すると猫耳娘は自分が何を求められているのか理解した。

「オカエリナサイマセ。ゴシュジンサマー（お帰りなさいませ。ご主人様～）」

満面の笑顔で放ったメイド言葉が配信視聴者たちを襲う。

：ごふッ！！？？

：とてつもない破壊力だ……

：俺もうダメだ。後は頼む。

：【雅乃鈴】ニウちゃん！なんて恐ろしい子ッ！！！マスターなんて攻撃魔法（萌え台詞）を教えてるんですかッ！！

：【防衛省の麗水（よす）ちゃん】ニウちゃんのメイドヴォイス。後日発売するかもしれません。

：有能

：有能

：有能オブ有能

：有能オブザイヤーいやディケイド（10年）

：10年に一度の逸材がここにいた

：流石天才開発者

「じゃあ次はこれだ！」

炎の仮面冒険者は次は指で『5』をつくる。

「モウ……ソコノダンシタチ、ウルサイニャア！（もう……そこの男子たち、うるさいにゃあ！）」

：正真正銘、本物のうるさいにゃあー！きたーーーーー！！！

：クラスの男子たちを可愛く窘める猫耳委員長きたー！！

：俺の青春は此処にあったのか……

：【雅乃鈴】にゃー！にゃー！にゃー！！

：【鳳薫琥（おおとりかおるこ）】わたし絶対この村に行く！！嗚桜はん！8大クランマスター集結や！100層踏破にゃ！！

：【鳴桜真月】ええ……

　　　暫くの間、猫耳娘ニウの萌え台詞大会が続いた。

：【鳴桜真月】……それでどうやって最初は言葉も通じなかった猫耳娘と仲良くなったんだ？

：【防衛省の麗水（よす）ちゃん】炎さん、ニウちゃんとの馴れ初めを教えて下さい。

「えーと。偶々（たまたま）ニウが【魔族】に襲われている場面に遭遇して助けたら好かれちゃった。言葉に関してはまあ契約している精霊が通訳になってくれたカンジ」

：さりげない主人公ムーブ

：そうやって無自覚に堕としていくんだな……

：そしていつの間にかパパになるかもしれない展開に至り、ベビーカーに変身すると

：どんなハーレム主人公でもベビーカーにはなった事はないんよ

：ていうか精霊って異種族間通訳にもなるんか？

：精霊有能

「そしてその後、村を魔物や魔族から守る炎の結界を張ったら村の皆からも喜ばれ気に入られたみたいで」

：無自覚に外堀も埋めていくスタイル

「村も【魔族】や魔物に襲われる事があるみたいで小屋とかボロボロだったから建て直してあげたんだ」

仮面冒険者が村の中へと歩いていくと、そこには現代的な三角屋根のログハウスが建ち並ぶ場所があった。

：なにこれ？これ全部炎がやったの？

：【防衛省の麗水（よす）ちゃん】これ全部炎さんが建てたんですか！？

「まあログハウスに関しては【樹の精霊】の子たちに頼んだんだけど。それとは別に俺が頑張った場所もあるね」

仮面冒険者は更に村の奥へと進んでいくと森が開けた場所に湖があった。そしてその湖のほとりには――。

：なにこれ？

：大型ドームテント？

：もはやグランピング施設と変わらないじゃん

大型のドームテントが湖に沿うように10棟近く存在していた。

一部透明になっているドームテントは外からでもふかふかなベッドやテーブルなど快適に過ごす為の家具まで用意されているのが分かるほどだった。

「【炎麗黒猫presentsダンジョン・グランピング（豪華なキャンプ）in猫耳村】です。高ランク冒険者の皆さんはもしよければ遊びに来てくださいねー」

：獣人の村が完全にリゾート化されてて草

：ここまで魔改造しちゃったら村の長老ポジみたいな人から怒られないの？

：【防衛省の麗水（よす）ちゃん】村の長老さんは現状を怒っていないのか？皆さん知りたいようです。

「長老？ああ。長老ならあそこで若いコたちと一緒に【風精霊のバナナボード】で遊んでるよ」

撮影ドローンが湖面を映し出す。

そこには灰銀の毛並みの猫耳の獣人の中に白銀の毛並みが目立つ老獣人が混じっていた。

「Fuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuu!!!!!!」

湖面を疾走する黄色いボードの上に直立している老獣人が華麗に何度も宙返りをしている映像が配信視聴者たちに見せられた。

：長老めっちゃアウトドアｗｗ

：獣人の身体能力凄ッ！！

：長老、現役バリバリだった

：村がジャパニーズレジャーに完全に飲み込まれてて草しかない

：【雅乃鈴】これがダンジョン・グランピング……行きたいッ！！！

「残念ながら今日はもうこの村を離れないといけません。うーんそうだ。麗水ちゃん聞こえてる？」

：【防衛省の麗水（よす）ちゃん】はい。なんでしょう？

「これだけ撮影ドローンあるなら1台くらい、この村に置いていってもいいかな？常時村の様子がわかるようにしておけば異変があったとしてもすぐ駆けつけられるし」

：【防衛省の麗水（よす）ちゃん】分かりました。1台はその村へ設置するようにします。

：だ、だったらその村のドローン映像、常にライブ配信してくんない？

：【防衛省の麗水（よす）ちゃん】炎さん。どうもケモ耳好きな方々からの需要が高いようです。ニウちゃん専用の配信チャンネルを創ってもいいでしょうか？

「それはニウ次第だけど。まあこの湖にドローン置いておいて偶にニウに画面に登場してもらえばいいか。いややっぱり湖と村の入り口の2視点欲しいかな？」

：【防衛省の麗水（よす）ちゃん】了解しました。ケモナーの皆さん、朗報です。世界初猫耳娘ちゃんの配信チャンネル誕生です！！

：うおおおおおおおおおおおお！！！

世界中のケモナーが歓喜した日となった。