第3-5話 【魔族】の倒し方


:【魔族】ってマジかよ……




日本国民が初めて目にする存在――【魔族】。


紫色の体躯に頭には4本の角。蝙蝠のような翼。そして鮮血のような紅い両眼。


人間と似て非なる、その異質な存在にコメント欄にも緊張が走る。




「――――――ッ!」



その【魔族】は配信画面を凝視している視聴者たちには理解できない言葉を呟いた後、舌打ちをし、その場を去っていった。




:逃げた?

:どゆこと?

:【防衛省の麗水(よす)ちゃん】炎さん、今の魔族の行動の意味は?……



「【魔族】には分の悪い勝負はしないだけの頭脳があります。でも逆に確実に仕留められるタイミングを狙ってくる狡猾さを持ち合わせているので本当に注意してください。今の撤退も実は罠のある場所に誘き出すのが目的かもしれないといった用心深さは必要不可欠です」



:狡猾な頭脳か

:魔物とはやっぱ違うのか

:厄介だな

:まあ普通の人間が101層に行ける訳ないんだけど


:でも撤退を選ぶ判断力があるのは有難くね?

:多分、炎が例外なだけだと思う

:魔族「なんだコイツ?ヤベェ……(舌打ち)」

:そりゃ全身燃えてたらヤバいと思うわ

:【新事実発覚】炎の仮面冒険者、遭遇した魔族が逃げ出す存在だった



「基本直進的な攻撃が多い魔物と違ってフェイントとか複雑な多段攻撃を仕掛けてきますし、脅威的な魔法や武器も使います。対人戦闘スキルを磨いていないとヤられます」



「――だからヤれる好機があるなら確実にヤらないといけません」




猫耳獣人姿の炎の仮面冒険者の右手が燃え上がり、顕現したのはスナイパーライフル。



『邪知暴虐の魔を逃がさず滅せよ――【魔核溶弾】』



狙撃銃を構えた仮面冒険者は【魔族】が逃げた方向へ発射した。


自動追尾の焔弾が一瞬にして配信画面の先へと消えた。




:今の炎の狙撃でとっくにいなくなってた【魔族】倒せちゃうの?

:対人戦闘スキルとは



「元々社畜で冒険者になったのも2年前で模擬戦とかの経験無いんで対人戦闘苦手なんですよねー。だから俺はいつもこうします」



:【魔族】が皆逃げていくのを後から長距離狙撃で仕留めるのか

:どっちが魔族の所業なのか分からんな

:??「対人戦闘が苦手なら狙撃パンすればいいじゃない」

:物騒なマリーアントワネットさんいるな



「【魔族】に関してはヤれる時にヤらないと後で別の階層の仲間を呼んできて襲い掛かって来るパターンもありますからね?それに冒険者パーティーの場合、一番弱点になりやすい女性ヒーラーを真っ先に狙ったり、人質にしようと画策してきますよ?」



:仲間呼ぶとかあるのか

:女性ヒーラー狙うとか許せん

:人質とかたしかにそれは容赦なく根絶やしにすべし

:同意

:同意

:同意

:女性冒険者を狙うようなヤツらは処すべしッ!!


:ていうか別の階層?




「これは確証のない推測なんですけど多分【魔族は階層間を移動】する事が出来ます」



もたらされた新たな情報に視聴者達は驚きを隠せない。



:【魔族】って階層移動できるの?

:じゃあ今までのダンジョンみたいに階層間の階段・踊り場はセーフティーゾーンじゃないって事?

:101層より下は下でやっぱりヤバさ増してるな

:じゃあ101層より下には安全圏なんてないって事?



:【防衛省の麗水(よす)ちゃん】炎さん、101層より下の階層で冒険者が休息をとれそうな場所は無いんでしょうか?



「一応無くは無いね。麗水ちゃん、俺が合図したら一度ライブ映像止めてくれる?その場所がどこにあるかはまだ大々的には教えられないから」



:なになに?

:また配信止まるの?

:どこへ行くんだ?



「30分、いや1時間後くらいかな?その場所に辿り着いたら配信を再開させていただきます。では皆さんもランチタイムという事でいったんサヨナラです」



炎の仮面冒険者がそう伝えると、配信画面が待機画面へと変化した。



:【防衛省の麗水(よす)ちゃん】池袋ダンジョン攻略配信、これよりランチタイム休憩とさせていただきます。配信再開は1時間後の予定です。



:じゃあ昼飯食いにいくか

:なに食べようかな?

:まだまだ暑いし冷やし中華にしよ

:俺はざるそば



視聴者達もそれぞれ好みの昼食を食べに配信画面から離れていった。




――1時間後。




:【防衛省の麗水(よす)ちゃん】それでは配信を再開したいと思います。わぁ……本当にいるんだ。感動。




:何々?

:麗水ちゃんだけ先にネタバレかよ

:何が映ってるの?

:早く見せてくれぇぇぇぇぇぇぇ!!!!



配信画面に映されたのはどうやら森の中に存在する村のようだった。しかしそこがただの村ではないのは一瞬で分かる。



――その村で暮らしているのは人間ではなかったから。



灰銀の毛並みの全身に麻服を纏った猫耳が特徴の種族がそこにいた。




:猫耳の獣人さんがいっぱいいるぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!

:うおおおおおおおおおおおお!!!

:本物かよ

:かわええええええええ!!!

:もっふもふ!もっふもふ!


:【鳴桜真月】亜人かよ

:【雅乃鈴】めっちゃ可愛い!!!

:【鳳薫琥おおとりかおるこ】これに反応しない女子は女子やないッ!




――猫耳の獣人の村。



コメント欄も大盛り上がりとなる。



村の獣人たちも炎の仮面冒険者の存在に気づく。


警戒してる様子でもなく、むしろ笑顔であり、どうやらこの仮面冒険者は村にとって敵ではないと認識されているようだった。



「ホノオ!!!!」



ひとりの猫耳娘が元気よく炎の仮面冒険者の元へ駆け寄ってくる。


ただ視聴者達はその娘が着ている服に唖然とする。



――メイド服姿の猫耳娘。




((((((((あっ……これはあの配信中毒者が色々仕込んでる村だ……))))))))



視聴者達は色々察した。

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