第3-4話 世紀の一戦!不死の霊王対炎のベビーカー
日本中が注目している池袋ダンジョン100層攻略配信。
煌びやかな宝珠が無数にも埋め込まれた絢爛たるボス部屋の扉がゆっくりと開き始める。
:いよいよ100層ボス戦か
:マジでベビーカー姿で挑むんだな
:冷蔵庫の時にはちゃんと理由があったんだしベビーカー姿にもきっと理由が……
:多分父親になるかもしれないプレッシャーでおかしくなってるだけだと思うぞ
炎揺らめくベビーカーはボス部屋の中へ入る。
100層踏破の最後の試練として冒険者を迎え撃つのは【不死の霊王】。
おどろおどろしい濃密な瘴気をその身に纏わせ、骨部分を蒼白く光らせている
「【
:100層ボスだけあって物理全無効かい
:純粋な魔力量勝負か
:魔力量勝負ならベビーカー姿でも問題ないねッ!
:どのくらいの魔力量が必要なのよ?
:【防衛省の麗水(よす)ちゃん】炎さん、ノーライフキングを討伐するにはどのくらいの魔力量が必要なんですか?
「多分S級魔物3000個体、SS級なら300個体を倒せる分くらい?安全に討伐するならS級魔物1万個体分の魔力量かな?」
:S級魔物一万……
:他の冒険者には無理じゃね?
:ふざけた格好ばっかりしてるけどやっぱりこの人、化け物だわ
:精霊の力借りなきゃ無理な訳だ
:でも防衛省大将クラスを10人集めればS級魔物3000個体はイケるんじゃね?
:国内8大クランリーダーが勢揃いすればノーライフキング討伐出来る?
:あのメンツが力合わせて100層踏破したら胸熱すぎる
:決して不可能な訳じゃない難易度なんだな
:【鳴桜真月】だってよ?
:【
「えーと。ノーライフキングは超強力な呪詛魔法で冒険者の命を奪いにかかってきます。なので戦闘を優位に進めるには詠唱を阻止するのが最大の攻略ポイントです。口を狙うのが一番効果的です」
:【鳴桜真月】成程。口を狙うのか
:おいおい。今の炎の雰囲気で口を塞ぐって……
:アレしかないじゃん
ベビーカー姿の仮面冒険者の周囲に顕現したのは炎の哺乳瓶だった。
:炎の哺乳瓶きたーwww
:ノーライフキング相手に赤ちゃんプレイww
:またも伝説の配信確定w
:【悲報】推定数千年以上存在しているであろう不死の王さん、哺乳瓶を咥えさせられる
無数の炎の哺乳瓶が不死の霊王の口へと直撃しそうになった瞬間、突然画面が暗転した。
:なんだなんだ?
:落ちた?
:【防衛省の麗水(よす)ちゃん】大変申し訳ないのですが、この哺乳瓶魔法は不適切表現としてアカウントBANの恐れがあるので映像提供を自粛させていただきます
:まさかの麗水NGきた
:哺乳瓶魔法はアウトだった
:まあ哺乳瓶を乱暴に扱うとか赤ちゃんの命に関わる話だからな
:【防衛省の麗水(よす)ちゃん】なのでノーライフキング戦が終了後、配信を再開させていただきます。
:【悲報】今回も100層踏破の瞬間、見れない。
:そんなオチある?
:【鳴桜真月】嘘だろ?……
:また100層踏破の瞬間を見れない【天譴】、ガチで凹んでそう
――30分後。
:【防衛省の麗水(よす)ちゃん】それでは配信を再開させていただきます。
:配信再開きた
:せめてどんな決着の仕方だったかくらい教えてくれない?
:【防衛省の麗水(よす)ちゃん】そうですね……ベビー用品で討伐とかノーライフキングさんもさぞかし無念で
:ひぇ……
:うわぁ……
:麗水海咲さんガチギレ
:これはブラック麗水ちゃん
配信画面に映し出されたのはシュンとした仮面冒険者の姿。
ベビーカー姿ではなく炎の猫耳獣人の姿だった。
「大変申し訳ございませんでした。麗水ちゃんから【それが将来父親になるかもしれない男がする事か!】とキツいお叱りを受けました。ここから先は真面目にやっていきたいと思います。実際油断できないので」
:裏でガチ説教されたみたいだな
:激おこな麗水ちゃん見てみたかった
:【悲報】池袋ダンジョン100層さん、真面目にやってもらえなかった
:長年日本の冒険者たちが目指し続けた場所へのリスペクト皆無すぎて草
:でも真面目にコツコツやってきた冒険者が100層踏破したのに101層ありますなんて知ったらショックで心臓止まりそう
:まだ101層がある事を受け入れられてない人や冒険者も結構いるみたいだしな
:このくらいの軽さで良かったのかもしれん
:それでなんでいつもの猫姿じゃなくて猫耳の獣人なの?
:もしかして新階層でもふもふ展開くるー!?
配信画面に映し出されているのは青く澄み渡る空に風になびく緑に溢れる草原エリアだった。
:ここが101層って事でいいのか?
:一見普通の草原エリアと変わらんな
:101層に来ると何が脅威になるの?
:もっふもふ!もっふもふ!
:【防衛省の麗水(よす)ちゃん】101層は何が脅威なのか教えて欲しいそうです。
「そうですね。101層からの階層踏破で最も気をつけないといけないのは――。あっいた」
:いたって何が?
:おいなんだアレ?
:全然もふもふじゃない……
一見爽やかな風景によりその存在の異質さがより浮き彫りとなる。
――紫色の体躯の人間?いや頭には4本の角を生やし、蝙蝠のような翼を広げ、鮮血のような両眼を備えた人間のようなモノ。
「――101層からは【魔族】に遭遇します」
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