第3話 Part.3
「徐懍先生、読めるんですか?!」
刘星宇はヒーローが現れたかのように胸の前で両手を握りしめ、期待の目線を送る。
「流石にこれは読めないだろ。これが読めたら今頃は国内一の教授だな」
「いや、所長!何言ってるんですか?!徐懍先生はほんとに素晴らしい特能人ですよ!」
刘星宇はいつの間にか所長である范睿よりも徐懍の方をより尊敬しているような言動を見せる。
范睿はジロッと冷たい目で睨む。すると刘星宇はあまりの恐ろしい顔に肩を震わせ、何も言わなくなった。
「……これは日記?炎帝の」
「分からないです。誰も読めないので……」
徐懍は無言でうなづき、ページをペラペラとめくっていく。
時折、彼のページをめくる指は止まったり、止まったと思えば悲しそうな嬉しそうな表情をしたり。
まだ一日も共に過ごしていない范睿だが感情を表に出す徐懍は珍しいと思った。
「何か分かったか?」
「いや。特能をはかる機械は確かにあったことだけは書かれてある。だけど、詳しいことは何も書いてない。この本は炎帝の日記だよ。彼の全てがここに書いてある」
徐懍はその本を大切に腕に抱え、ひと撫でする。
(こいつは本が好きなのか?)
「刘星宇。本を徐懍に貸してやれ」
「はい。所長のおっしゃっる通りにー」
刘星宇は机の引き出しから、続きの二巻目も徐懍に渡してやる。
「ありがとう」
「お礼なんて言わないでくださいよ〜!もう僕達、仲間でしょ!!」
刘星宇が徐懍の肩に手をまわそうとしたが、その手は空をきる。徐懍がさり気なく避けたのだ。刘星宇は唇を尖らせ、「なんでー?!」と喚く。
そうしていると事務所のドアが乱暴に開けられ、ベルが激しく音を立てた。
一斉に音がした方を見る。そこには李静が立っていた。
「ん?李静どうした?」
范睿は両手をポケットに突っ込みながら李静に近づく。その瞬間、范睿の頭に鋭い痛みが走った。李静が手に持っていた分厚い書類を丸め、范睿を叩いたのだ。
「おい!急に何だよ。お前はいつも怒らないと生きていけないのか?!」
「これ、警察署から依頼」
李静は完全に無視し、ただ雑に書類を渡す。そして、椅子に深く腰掛け、大きなため息をついた。
「……犯罪者を何人事務所に入れれば気が済むの?」
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