第2話 Part.1 運命だった
「范睿!なんで?!」
時間通り、警察署前に到着したはずなのに
李静は怖い顔をして睨みつける。
范睿は顔をしかめて首を傾げた。
「は?お前が来いって言ったんだろ」
「そうじゃなくて髪!美容院行ったんじゃないの?」
「あぁ。ちゃんと染めてきた」
范睿は背をかがめて頭の上までしっかり見せる。今の姿はちゃんとスーツを着て、ひげもそり、髪も綺麗な金髪だ。どこもおかしなところはない。
しかし、李静は小さく「信じらんない」と呟いた。
「普通、黒に染めるでしょ?!」
「何でだよ。俺のトレンドマークはこの金髪なのに黒にするわけ無いだろ。どう?似合ってるか?いつもより明るくしたんだよな」
「似合ってるけど、ここに来る時は黒にしなさいよ。めちゃくちゃ目立つわ」
「そうか?誰も見てないだろ」
范睿は髪の毛を触りながら、周りを見渡す。すると、こちらに向かって手を振りながら走ってきている男がいた。彼はどんどん距離を詰め、二人の目の前で止まる。
「李先輩!范所長!お疲れ様です」
「お!後輩くんだ。久しぶりだな」
「はい!またお会いできて光栄です」
李静の部下、劉浩宇は恭しく頭を下げる。
范睿は彼の肩に手を回した。
「後輩くん。李静の部下なんて辞めて俺のとこに来ない?君みたいな礼儀正しい人、現代にはなかなかいないよ」
「范睿!」
李静がギロっと睨む。しかし、范睿は相手が反応を示すほど楽しくなってしまうのだ。
「うわ!李先輩、怖いな。俺だったらすぐ辞めちゃうよ」
「うるさいわね。いい加減にしなさい!」
警察署から出ていく人がみんな二人の方を見る。ほとんどの人がまたか、と笑っていた。
「お二人共、落ち着いてください」
「後輩くん!それは李静に言って」
「はぁ?!落ち着くのはあんたよ!」
二人の言い争いはどんどん激しくなっていく。
劉浩宇は間に入って距離を取らせた。
「僕はお二人を尊敬してるんです!李先輩と范所長は仲悪そうに見えるけど、息ぴったりでどんな事件も解決するし、なにより、被害者に対する声のかけ方とか、ほんとに凄いんですよ。だから……二人とも凄いので、いちいち言い争わないでもらっていいですか?!」
急な圧力に二人は目を見合わせる。なんとか「……うん」と頷いた。
「あ!そういえば!」
二人が驚いていることに気づいていない劉浩宇はかばんをあさりだす。そして茶色の封筒を范睿に手渡した。
「ありがとう。これなんだ?」
「今さっき終わった王梅鈴の司法解剖の結果です。不審な点があって范所長に見て欲しいということだったので僕が預かりました」
「そういうことか。了解!」
范睿は今すぐ見たかったが、ここで見ると李静に小言を言われてしまうので大人しく鞄の中にしまう。
劉浩宇はしっかり范睿が鞄に書類を入れるところを見たあと、次は李静に向かって話しだした。
「李先輩にも伝言があって今から緊急会議が始まるそうです」
「なんの?」
「“連続殺人事件”の会議です。新たな被害者が出ました」
李静の表情が一瞬で厳しいものに変わる。
それに対し、范睿は警察署の中に入ろうと足を進めた。
この連日ニュースでも報道されている連続殺人事件。これに興味がないと言えば嘘になるが、これは范睿の管轄ではない。警察署から依頼された刑事事件しか担当できない、これが范睿の事務所のルールなのだ。
「范睿!!」
急に李静に呼び止められ、肩がビクッとする。
「何だよ。急に。でかい声出すなって」
「もう上に話は通してあるから、一人で行けるわよね」
「俺は子供かよ。行ってきまーす。李ママ」
范睿は歩きながら後ろを向いて手を振る。
李静が今にも殴りに来そうだったが、劉浩宇が必死で気持ちを落ち着かせようと奮闘していた。
警察署は二十階まである。その中で取調室は五階だ。
「こんにちは」
范睿は取調室の前に立つ強面な男に声をかける。すると、その男は「あ!」と声を出した。
「范所長!よく来てくださいました」
「今、どんな感じ?」
男は目を伏せ、首を横に振る。
「やっぱり何も話しません。覗いてみてください」
范睿は写真で見た綺麗な男が実際、どれほどなのか興味があり、ワクワクしながら中を覗き込む。そして容疑者である徐懍の顔を見た瞬間、思わず「うわっ」と声が漏れた。
「どうしました?何かありましたか?」
「……いや、何もない」
范睿は唾を飲み込む。彼は今まで綺麗な沢山の女性と付き合ってきた。しかし、徐懍は今まで見たどの人よりも抜きんでて美しく、まるで白百合のような雰囲気をまとっていた。
范睿は平然を装い、ドアを開ける。
「変わるよ」
「あ、はい」
さっきまで取り調べをしていた男と入れ替わる。
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