第4話 疑い
「──明日が来た!また会える!!」
昨日結果は上々なかなか上手く出来た。どんな家に住んでいるのかも分かった。大きく進歩した。これで蒼さんを狙う男子共と差が開いた。
そんな事を考えながら意気揚々と学校に向かっていると正門前で蒼さんに出会った。
今日はラッキーな日だななどと考えていたがこの出来事が疑いの芽となるとは思っていなかった。
「お、ぉはょー」
聞こえるはずも無く蒼さんは学校へ入っていった。茜さんと話していたからあまり邪魔したくなかった。等と勝手な言い訳を心の中で唱えながらも遅れて学校に入る。
……やはり茜さんと仲が良いな。毎日茜さんと来ている。蒼さんを一番よく分かっているのは茜さんか……ぜひ、蒼さんの話を聞きたいものだ。
***
1時間目は化学。蒼さんは得意なのだろうか?今の所真面目に授業を聞いてるが……
様子がおかしいということは分かっている。ピクリとも動かない。
──もしや、今やってる水の状態変化の授業で宇宙の深淵を覗こうとしているのか……!? そうに違いない。あれだけ真剣に考え込んで動かない。今この瞬間蒼さんの頭の中では宇宙が広がっているんだろう。地球外生命体の謎も解いてしまうのではないだろうか!? 生命の神秘を解き明かそうとしているのか!? そうに違いない、それ以外考えられない。凄いよ蒼さん!!
一方当の本人はと言うと、
「より目って難しい……」
だいぶ的外れな見解に至った樹であった。
『化学が得意な蒼さん。』
***
2時間目は数1だ。もちろん僕は何言ってるかあまり理解していない。そして見る限り……
口が少し開きじっと黒板を眺めながら斜め前で放心状態となっている蒼さんがいる。情報量が多すぎるたのだろう。固まって動けなくなっている。
クッ、諦めないでくれ蒼さん!! この辺ならまだ中学の内容も入っている。良く考えれば解ける問題もあるぞ蒼さん!!
「…………!!」
何かを閃いたようにハッとする。
「──三平方の定理……!!」
違う! 絶対に違う!! それだけは断言出来る。そもそも三角形の話はしていない。なぜ三平方の定理が出てきたのだ!?
「ほれ、この問題……緋村解いてみろ。自信ありそうだな。」
英語の時と同じ様になってしまうのでは、と考えていたが違った。自信満々に答える。
「──3です。」
「正解だ、よく解けたな。」
──蒼さんは天才だ……
『三平方の定理の使い手だった』
***
3時間目は地理総合か、蒼さんの家もしれた事だし緯度経度も調べてみるか。
ストーカーでも住所特定で終わるだろう。さらにその上の緯度経度での特定。ただの変態でしかない。
にしても、この授業は何も無いな。あんまり面白い先生ではないし、仕方ないか──
当の蒼は違った。彼女の心の中にはある疑問が残っている。もちろん樹の事である。
朝、こちら側に住んでいるのにも関わらず登校では反対側から鉢合わせた。そこで蒼の心情にはまた説が浮上した。『樹は茜のストーカーだった説』昨日の事も全て嘘だったのではないかと思ってしまったのだ。
もし、アイツが本当に茜ストーカーなら私を騙した分も込めて殴ってやらないとな……
危険な事が起こりそうなことはいざ知らず。相も変わらず蒼さんを眺めてニヤニヤしている樹であった。
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