夢で小6の自分と会った
久石あまね
メッセージ
寝ていて、夢を見ているなと自分で気づいた。
色とりどりのお花畑で僕は座りながら本を読んでいた。
字面を追うがなんて書いてあるかはわからない。
すると突然目の前に黄色い帽子を被った小学生が現れた。
小6の頃の自分だった。
僕は現在28歳。
つまり、16年前の自分だ。
「よお」
僕は言った。
「よお」
と小6の自分に言われた。生意気なやつだ。大人に「よお」なんて。
「今何してるん?」
「……」
「プロ野球選手?」
失望させるかな。僕は今、精神障害を患っていて、普通の仕事はしていない。
「就労継続支援b型やで」
就労継続支援b型とは障がい者の方が働いたりする作業所のことだ。
「なにそれ、何の仕事?っていうか、俺プロ野球選手になられへんかったんや」
「せやで。でもな、みんなプロ野球選手になられへんねんで」
「そうなんや、お母さんは元気?」
「元気やで。お兄ちゃんなんか、結婚して子どもおんねんで、すごない?」
「へぇ~、まじか。お兄ちゃん結婚してるんや。すごいな〜」
小6の僕は素直でいいヤツだった。
小6の僕から見て、今の僕はかっこいいだらうか?
普通に考えてみると、かっこよくないだろうな。
「中学生になったら、彼女とか出来るんかな?」
小6の僕が言った。
「気ぃ早いで」
28歳になっても彼女は出来たことないよとは言えなかった。
「俺ってなんか病気になったりするん?」
なるよ。高2で統合失調症って病気になる、とは言えなかった。
「誰でも病気になんねんで。でも病気になってから考えても大丈夫やで」
心の準備をしておけよとは言えなかった。なるべく小6の僕には何も知らせたくなかった。
「今、何頑張ればいい?勉強?野球?」
「今しかできないことを頑張って」
「なんやろ?今しかできないことって」
「それはもう自分で考えられるやろ?」
「うん。たぶん」
僕はいつの間にか目を覚ましていた。頬には涙が乾いたあとがあった。
僕はこのとき思った。
小6の僕から見てもかっこいいと思われるような人間にならないといけないなと思った。
夢で小6の自分と会った 久石あまね @amane11
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