幕間 主人公、ナル・ワーナビ

 僕の名前は、ナル・ワーナビ。


 この『異世界転生賢者のチート無双〜大魔導師の孫に転生した俺のハーレムライフ〜』の主人公だ。


 僕はこの世界に転生し、魔術の才ある証『練炭髪』と呼ばれる黒髪を持って生まれ落ち、先の英雄の1人である大魔導師エブリス・ナーロン・ワーナビに育てられ、その全ての叡智を授かり、そこから更なる発展を遂げた魔法を体得した……つまりはチート持ちである。


 僕がこの世界の主人公を自認したのは3年前だったか、役割、運命、そして未来を知り僕は歓喜した。こんな勝ち組な最高の人生を送る人物になれたのは、よほど僕は前世で徳を積んだか、余程の不運と悲劇に神様が慈悲を与えてやり直しの機会を与えてくださったからに違いないと。


 無論与えられた運命を超える為、修行は怠らなかった。もしも未来を知って怠惰に走り、物語が変わって僕の素晴らしき未来が変わったらダメだからね、報酬に対して義務はしっかりこなさないと。


 この見えた運命と同じ力を手にした僕は、まず最初のヒロインとこの町で出逢う、運命の出会いが待っていると思っていた……。


 だが違った、その路地でチンピラに絡まれている筈のヒロインでいずれ僕が最初に娶る筈のセリス・ファラウドは居なかった事に僕は絶句した。


 運命が変わったのかと驚いたけど……まぁ慌てる必要は無い。そんな誤差は僕の力でいくらでも修正できるさ、何しろ僕は主人公なのだから!


 そして始まった入学試験……無論筆記は満点!一度眼を通せば、聞けば、僕は決して忘れないしその通りにできるからね。そのまま実技試験に行けば……ああ、やってしまった。加減って難しいよね、今の今までこれくらいが手加減と思ってたからさ?


 そうして壇上を立ち去っていると……僕はついに見つけた。セリス・ファラウドを!やはり運命は僕と彼女を繋げようとしてくれている、僕はいずれまたの意味を込めてウインクして立ち去った……。


 そこで一度呼び止められた、一体誰だ?この僕を呼び止めたのはと振り返ったら……巨人が居た。え?誰?こんな人居たかなと僕はパニックになって、その金髪の偉丈夫に驚いたんだ……そしたらその巨人は名乗ったんだ、自分が『ギニス・サーペンタイン』だって。


 ……は?いやいや、ギニスって僕がセリスを助けるために決闘する、出来損ないと言われてる細身で、長い金髪、それでサーペンタイン家の次男だよね?何がどうしたらこんな身長高くなって、筋肉ムキムキで髪の毛も短めに切った巨人になってるわけ!?


 え?何?僕もしかして運命とは違う行動したかなぁ?いやしてない!!ここまで間違って無い!!まぁ顔には出さず僕は握手に応じたさ……そうしたら僕のハーレムの1人が、歳に不相応なたわわを揺らして来たんだ、もしかしてさっきのウィンクで運命感じたかな!


 そうしたらさ……ギニスのやつ腰に手を回して僕の女を連れて行ったんだ……。え?え?た、確かに彼女はセリス・ファラウドで間違いなかった、自己紹介もしたから……いやいや待て待て、慌てる必要は無い。


 たしかギニスとセリスは婚約の話を親同士がしていた、多分それが何か変わったんだ!何しろガリガリチンピラギニスがあんな筋肉ダルマになってるんだから!


 つまりだ……この後僕とギニスは決闘を行う、その時には多分2人の仲は冷え込んでいて、セリスは鬱陶しくなっているから、そこに僕が助けに入れば辻褄が合うじゃ無いか!


 だったらその日を待つことにしよう、なに……如何に鍛えてもギニスが僕に勝てるわけが無い、僕は生まれながらにして才能もあるし、ここまで鍛えたんだから……その日を楽しみに待つ事にしようか。


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