第7話 日記20240505 付喪
私は透析患者である。
二日に一度四時間の透析を受けることでもう二日の命を得ている。
透析を始める前に体重を測り、全自動の血液浄化装置に繋がれる。そしてこの際に決められた重量の水を血液から引かれる。腎臓が機能しておらずこの形でしか水を排除できないためだ。
そして透析が完了するとまた体重を測る。もちろん引いた水の量だけ体重は落ちる。
これの繰り返しである。
この体重計は非常に精度が高く、また患者の命に関わるため厳密に保守されている。だからこの計算式は正確で、100g単位で上下するがその程度に収まるのが通例である。
ところが最近は私が載った時だけ、終わりの体重計が示す数値が300gほど減る。引く分が多いほど許される飲み物の量が増えるので嬉しいのだが、これが不正確だと命に直結するので大変にまずい。
だから体重計を操作する看護婦さんも首を傾げて測りなおす。
前までは測りなおすと正しい体重が出ていたのだが、ついに測りなおしても300g低い値がでるようになってしまった。
こうなると高価な体重計かもしくは透析機械を買いなおさねばならなくなるので病院側としては大変である。ちょっと騒ぎになってしまった。
・・・
ごめんなさい。私が悪いんです。
この体重計、たぶん付喪神化しつつある。
器物百年にして付喪神と化すというが、私の周辺にある物は極めて短い年月で奇妙な意思ある動作を見せるようになる。(身の回りの実話怪談『干支化け』参照)
そしていつも何か騒ぎを引き起こすのである。
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