第4話

「えーーーーと、いいアイデアが

浮かばないなあ」

まったく読者に見向きもされない

成人向け小説ばかり

書いていた日棟田荊軻(ひむなたけいか)は

家計の究極的惨場を目の当たりにして

何らかの方向転換を余儀なくされた。

「いい小説を書くにはまず道具から。

古道具屋に行って年季の入った

ワープロでもさあしてくるか」

「無駄だよ、お父ちゃん才能ないもん」

「殺すぞ、このガキ!それだけは禁句なんだ」

「どうして」

「どうしてって」

「当たってるから?」

「そうだよ」

荊軻がそういうと、息子の晴次が

一台の子供用のパソコンを荊軻に

手渡した。

「どうした、これ」

「おかあちゃんに買ってもらっつた」

「あんにゃ郎、オレに内緒で、いくらだった?」

「3,500円」

「返す」

「どうして」

「そんなオモチヤで大人の立派な小説が書けるわけが

ないだろう」

「このパソコン人間の運命を自由自在に操れる

ことができるんだ」

「あほか」

「試しに何か書いてみなよ」

「ふーーーーっ」

荊軻が大きく息を吐いた。

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