1989年・女子高生コンクリート詰め殺人事件~何の罪もない美少女をさらっていじめ殺した綾瀬の悪魔たち~

44年の童貞地獄

第1話 会う者すべてに愛された少女

古田順子は1971年(昭和46年)1月18日に生まれた。

埼玉県三郷市出身で、一部上場企業に勤める父親と母親に兄と弟の五人家族。

理想的な家庭であり、両親の愛情に包まれて成長した順子は幼いころから聡明な子として近所でも評判だった。

保育園児か幼稚園児くらいなのに小学生でもできないくらいきちんと挨拶ができたりしたからだ。

これは長じて後も変わらず、気配りができて礼儀正しい子という印象を彼女を知る者は口をそろえている。


そしてその聡明さや礼儀正しさ同様、幼少時から目立っていたのはその容姿だ。

幼い頃から目鼻顔立ちが非常に整っており、それは成長するにつれてスタイルの良さとともに際立ってゆく。


今に残る順子の写真は80年代のぼやけたような写真ばかりだが、もし実物の彼女を見たならばハッとなったはずだ。

166センチの長身でモデルのようなスタイル、それに加えてグラビアアイドル級の文句なしに可愛らしい顔立ち。

高校は埼玉県の県立八潮南高校という何の変哲もない高校に通っていたが、彼女が堀越学園に通う現役の芸能人だと言われれば誰も疑うことはなかったことだろう。

実際、順子はその方面に興味がないわけではなかったらしい。


当然彼女は小学校から高校まで男女共に好かれていた。

男子生徒はもちろん女子生徒だって美少女にはお近づきになりたいのだ。

ケーキ作りや手芸が趣味という女の子らしさもたまらない。

家の家事についても母親をサポートし、まだ幼少の弟の面倒もよく見ていた家庭的な側面もしかりである。

成績もよかったし真面目だったから教師の評価もよかったのは言うまでもない。


ここまでちやほやされたならば、自分は好かれて当然とばかりに高慢ちきでわがままな人間になりがちである。

だが、生来おおらかで善良な性格だった順子は誰にでも優しく、来る者拒まずで平等に接していたという。


身も心も華がありながら性格が良く、魅力だらけの順子はいつもみんなの中心。

学校に行けば驚くほどたくさんの生徒に代わる代わる声をかけられていたが、彼女はどの人間に対してもいつもと変わらぬ笑顔で答えていた。


接した人間すべてに好かれ愛される順子だったが、中には好きになってもらっては困る奴にも好かれていた。

八潮南高校在学中に、隣接する東京都足立区綾瀬に巣くう一歳上のヤンキーに付きまとわれて迫られ、怖い思いをしたことがあったのだ。

みんなに好かれるというのも考えもので、こういう害虫も寄ってくるものなのである。


その件はそれからしばらくして向こうがあきらめたみたいで何となく一件落着し、順子は楽しい高校生活を再開。

進路を決める三年生になると順子は就職を選択し、就職活動の末に家電量販店に内定する。

これで一安心だ。

残りわずかとなった高校生活も卒業までのんびりと過ごせるし、思いは入社前の春休みに向かう。

旅行が大好きだった順子は友達たちと卒業旅行をもくろんでいた。

あと、去年知りあった建築作業員の彼氏とのスキー旅行もだ。


でも旅行は何かと物入りだ。

軍資金の調達のために順子は10月くらいから埼玉県八潮市内のプラスチック成型工場で放課後週二回のアルバイトを始めた。

さあ、みんなと楽しい旅行のためにがんばろう!


11月を迎え、順子が楽しみな旅行のためにバイトをしつつ残り少ない高校生活を満喫していた頃、以前付きまとってきたヤンキーの本拠地である東京都足立区綾瀬に同じく巣くう者が順子に邪悪な熱視線を送っていた。


その男の名は宮野裕史(18歳)。

宮野は以前の害虫とは比べものにならないくらいの毒性と攻撃力、凶悪さと狡猾さを有していた男でもあった。


順子は当然そんな奴に自分が狙われていることをまだ知らない。

そして自分が悲劇と言うにはあまりにむごたらしい最期を遂げたヒロインとして、それから三十年以上日本ばかりか世界中で語り継がれるようになることも。






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