第3話 村を守れ!

 モップの部屋に現れたふんどし男。


 かんっぜんに異常!

 かんっっぜんに変態!


 どこかの蛮族……!?

 もしかしたらゴンザレスもギグも、もう食べられちゃってるのかも……。


 目の前で固まってるふんどし男を観察する。


 下は白のふんどし。

 上はお腹丸見え、ちんちくりん上着。

 歳は若そう。

 短髪。

 ツリ目。

 いかにも野蛮! って感じ。

 けど……顔の作りがちょっとだけ整ってる?

 あ、いや、ほんのちょっとだけね!

 別に変な意味とかじゃないんだから!


 こほん。


 気を取り直して私は勇気を振り絞る。


「ゴ、ゴンザレスとギグを返しなさい! このふんどし野蛮人!」


「や……野蛮人だぁ……? そっちこそ野蛮人だろうが……っていうかぁ……」


 男の顔が怒りに満ちる。


「これは『ふんどし』じゃなかっ! 『締め込み』って言うったいっ!」


 ……は?


「いや、そんな呼び方とかどうでもいいし!」


「よくなか! めちゃめちゃ大事なことやろ~が!」


「はぁ!? 蛮族の風習とか知らないわよ!」


「誰が蛮族だ、誰が!」


 なんだこいつ……?

 人さらいのはずでしょ?

 なんで私、そんなやつとフンドシの呼び方について言い合ってるの……?


「と、とにかく! もうあんたは終わりだからね! これだけ騒いでたら村の人達が起きてくるんだから!」


 はい、ハッタリ~。

 村人はみんなおじいちゃんおばあちゃんばっかで~す。

 たとえ起きてきても戦力になりませ~ん。


「あ~、マジかクソっ……! チッ、しょうがなか……! しかも女とこげん話すことになるとは最悪ばい……」


 はぁ? 女だから最悪?


 ムカムカムカ。


 こいつ、絶対に捕まえてボコす!


 と思ってると。



 ダッ──!



 男がきびすを返して駆け出していった。


「あっ……ちょっと! 待ちなさい!」


 当然追う。


「パル姉ちゃん!」


「モップはそこにいて! 私があのふんどしを捕まえてくるから!」


 そう言い残して部屋を飛び出す。

 家の外に出ると、すでに男の姿は遠くに消えかけていた。


(は、速い──! けど──)


 そっちに行くんだったら……!



 ザッ、ザザザザザ──ッ!



 ここのくさむらを抜けて突っ切れば──!


 ザンッ!


 ほ~ら、先回り!

 追いついた!


「わっ! なんで!?」


 驚くふんどし男。


「なんでって、ここは私の育ったインジャ村だからよぉぉぉぉぉ!」



 ガシッ!



 タックル。


 やった! 捕まえた!


「うわっ!」


 飛びついた勢いで私たちは地面を転がっていく。


 ゴロゴロ~!


 絶対に離さないんだから~~~!


「うわっ、やばかっ!」


 ヤバい?

 そうでしょうね!

 これであんたは完全に終わりよ!


 私は目をつぶって必死に男を抱きしめる。

 ん?

 なんか明るいような気がするけど気のせいだよね? 

 そう、そんなの気にしてられない。

 だって。


「私が、村を守るんだああああああああ!」


 ぎゅぅぅぅぅ!


 思いっきり男を抱きしめる。


 ……と。


 ふと、あたりが急に明るくなった気がした。




 ……ん?


 ……あれ?


 うっすらと目を開ける。


 ……へ?


 …………ふぇ?


 ここ……。


 どこ?


 気がつくと私は。


 全くの知らない場所にいた。


 しかも。


 顔を上げると。


 そこには。



 たくさんのふんどし野蛮人たちが……。



「……はひ?」


 あれ、これもしかして……。


 私……。


 詰んだ……?

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