第2話 ふんどし男!

 インジャ村の男衆三人を紹介しよう!


 最年長のゴンザレスは筋肉バカ。

 私と幼馴染のギグはスラッとした常識人。

 そして、最年少のモップは──。


「あら、あんたちょっと大きくなった?」


 ちっちゃくて可愛いのだ。


「ちょっとパル姉ちゃん……? その……あんまりくっつかないでぇ……」


 名前の通りモップのような前髪を揺らしながらモップはもじもじと抗議する。


「しょうがないでしょ、あんたのベッド狭いんだから。くっつかないと隠れられないじゃないの」


「そうじゃなくて! なんで必要があるんだよぅ……」


「は? あんたをさらいに来るんだからここで隠れてるのが一番でしょ?」


「いや、だからこの体勢は色々とんだってばぁ……」

 

 ? よくわかんないことを言うわね?

 小さい時はもっと物わかりがよくて、なにを言っても「うんうん」って頷きながら喜んで引き受けてくれてたのに。

 まったく……反抗期なのかしら。


「ほらぁ、体が当たってるってばぁ~……」


「狭いんだから当たるに決まってるでしょ? だいたい昔はよくこうやって一緒に寝てたじゃない。なにを今さら急にグチグチ言ってんのよ」


「急にっていうか……色々あるんだよぉ~、男にはさぁ~……」


「なぁ~にぃ~? なにがあるってんのぉ~? 言ってみなさい、パルお姉さんに~、こちょこちょこちょ~!」


 モゾモゾモゾ。


「ふわぁ~……! だからやめてってばぁ~……!」


 とモップと戯れていると。



 ガタッ──。



 物音。

 外から。


「パル姉ちゃ……」

「シッ──!」


 私は人差し指を口に当てると、布団の中に持ち込んでいた棒きれを握りしめる。



 ガサゴソ……。



 やっぱり近づいてきてる、足音。

 本当にいたんだ、誘拐犯。


 棒を握った私の手がモップの背中に触れる。

 モップの震えが伝わる。

 かわいそう。

 怖いんだね、モップ。

 守ってあげるからね。

 この、パルお姉ちゃんが! 



 ガラッ……ガララっ……。

 トス……トストス……。



 扉を開けて建物の中に侵入してきた。


 急に体がこわばってくる。


 え、大丈夫?

 私一人で。

 私、女だよ?

 非力だよ?

 勢い余って隠れてるけど、相手は力持ちのゴンザレスやギグを連れて行った誘拐犯だよ?

 こんな棒きれひとつでほんとにどうにか出来るの?


 なんて思ってると。



 カタッ──。



 部屋の前で、足音が止まった。


(入って──くる──)



 キィ──。



 ゆっくりと扉が開く。


(えぇい! やけくそ! 先手必勝!)


 私は意を決して布団から転がり出る。



 ゴロゴロゴロォォォォ!


 ……ドシンっ!



 そしてそのまま壁に激突。


「あたた……勢いよく飛び出しすぎた……」


 真っ暗な部屋の中、ぐわんぐわんと揺れる頭をさする。


「うおっ!? なんだこいつ!?」


 男の声。

 若い。

 知らない声だ。

 やっぱり誘拐犯……!


 ま……まずは喋って威嚇だ!


「あ、あんたっ! 人さらいの野党でしょ!? あんたらがさらったゴンザレスとギグを返してもらうんだからね!」


 啖呵を切りながら、近くにあったランプをともす。



 ポッ──。



 すると。


 その光に照らされたのは──。


「は……? はぁ!?」


 ふんどし姿の。


 若い男だった。

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