第四話

 あ、そうだ。

 私といっしょじゃないと眠れないなら、私が寝なきゃそのうち寝るんじゃない?


冬都ふゆと

「なに?」

 相変わらずかちかちとソファでビデオゲームをしてる冬都に話かけると、目は画面から離さないまま、唇だけを動かした。

「今日冬都が寝るまで寝ないから」

 何に納得してるのかわからないけど、ふーん、とだけ返ってきた。


 かちかち。

「ねえ、冬都まだ寝ないの?」

「うん。だってどうぜベッド入っても寝れないんだもん」

「まあ、明日土曜だからいいけど。ふわあああ……」

 ねむ。

 冬都が開けたポテチをパリパリと食べながら、ソファの隅でテレビのゲーム画面を見てたら眠たくなってきた……。

 中学生ってよくこんなゲームを何時間もやってられるなと思ったけど、一日10時間も仕事するよりは楽しいのか。

「……勝った」

 夜だからか、音量を小さくしてるスピーカーからファンファーレが聞こえてくると、ようやく冬都がコントローラを机に置いた。

 そのままポテチに手をのばすと、すでに綺麗な形のチップスがなくなっているのをみて、冬都はむっと眉根を寄せている。

 あ、今の顔かわいい……。

 好きな子にいたずらしたくなっちゃう男の子の気持ちって、これに近いんだろーな。


 やばい。

 毎朝、鞭打って五日間動かした身体がもう限界……。

「ねー、ふゆとー。まだねないー?」

「ねえちゃんがねるまでねない」

 そう言って、冬都は目をしょぼしょぼさせながら、スマホをいじっている。

「きょう、ふゆとねるまでねないわよ……」

「はやくねてよ……。おれだってねむい……——ふわああ……」

 大きな涙が、冬都の頬をつたった。

「もう……」

 ティッシュをとって、冬都の涙を拭きとる。

 と、もう目がとろ〜ん、としていた。

「……ねむいんでしょ」

「……うんん」

「うそ……。……もうねるじゅんびして——」

 あー、まだ私たち歯も磨いてないのか。

 ねんむ。

「……ねえちゃん……はみがきとってきて……」

「……いやよ、ふゆともってきてよ……」

「……むり……うごけない……」

「……わたしも……ふわああ——」



 ちゅんちゅん……。

「あんたたち……」

 半分くらいしか目が開かなかったけど、声が聞こえた方を見ると、お母さんが腰に手を置いて、呆れた顔で私を見下ろしていた。

 あれ……、この感じ……?


 はい。

 かわいいかわいい弟と抱き合って眠ってしまいました。

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